先が見えない時代ならば自らつくるしかない
——経済発展で成熟した社会において市場は飽和したようにも思えますが、イノベーションを起こすことによって、成長できる市場は存在しますか。企業の担当者はどのような発想が必要でしょうか。
VUCAの時代とは、先が見えない時代という意味です。見えないものを予測しようとすると間違えます。であれば、自らつくるしかありません。つまり、先が見えない時代はむしろイノベーションの好機なのです。
そこでは、自分が本当にやりたいことは何なのか、あるいはつくりたい未来とは何なのかを考え、それをどのような人たちに届けたいのかという「内発」のイノベーションであることが大事です。
ただ、イノベーションというキーワードは、発明のような技術革新と誤解されやすい。経済学者のシュンペーターも指摘しているように、発明とイノベーションは異なるものです。大切なのは技術革新を起こすことではなく、市場を創造することです。
とはいえ、誰も進出していないような有望な市場、すなわちブルーオーシャンを見つけることはなかなか容易ではありません。変化のスピードが速い時代にはブルーオーシャンもすぐにレッドオーシャンになってしまいます。
私はそれよりも「パープルオーシャン」を狙うのが効果的だと考えています。ブルーオーシャンとレッドオーシャンの境目辺りの、自社の強みを生かせるところにチャレンジする。私はこれを「ずらし」といっていますが、成功確率の高い戦略の一つです。既存の事業を深掘りしつつまったくの新規事業を起こすという発想ではなく、既存の資源を生かしながら新陳代謝させていく手法がいいでしょう。
繰り返しになりますが、現状の市場から未来を予測するのではなく、むしろ、「未顧客の未実現(潜在的)需要」に「自社の未実現(潜在的)の強み」を掛け合わせるのです。日頃からこのようなエクササイズをやり続けていくことで自社らしい新規事業がつくれるでしょう。
——新規事業開発において企業は、新しい分野、未経験の分野にチャレンジしていくことにもなりますが、成功のためのポイントはどのような点でしょうか。