作業員に分かりやすく、実感しやすい“イメージ”で注意喚起

「SpectA KY-Tool」は、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなど、さまざまな端末に対応する安全管理プラットフォームだ。これらの画面に表示される検索ページに「架台のブラケットを溶接棒で溶接する」といったその日の作業内容を入力すると、その作業に伴って「予想される危険」(リスク)と、「安全指示」(対策)が具体的に表示される。まさにジャストインタイムである。

文字だけでなく、絵(イラスト)を使って危険な作業の例を教えてくれるので、視覚的にイメージをつかみやすい。「言葉だけでは実感が伴いにくいリスクも、よりリアルに理解できるので、危険回避の感度が高まります」と井戸プロダクトマネージャーは説明する。

工事や作業ごとの災害リスクと対策が、“ジャストインタイム”で共有できるAI安全管理ツールとは井戸伸彰 SOLIZE Innovations事業部 SpectA KY-Tool プロダクトマネージャー

こうした検索・表示の仕組みを支えるのが、豊富なデータベースと自然言語処理AIだ。

「SpectA KY-Tool」は、顧客の社内に蓄積された労災事例や安全対策資料の他、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」など数万件の他社事例をデータベースとして使用している。この膨大なデータの中から、その日の工事に関連する情報をAIがピックアップしてジャストインタイムでリコメンドするのだ。

近年、建設工事現場では外国人の作業員も増えている。そのため、「SpectA KY-Tool」は7カ国の言語に対応。文字だけでなく、絵を使って説明をするので、外国人にも理解してもらえると好評だという。

具体的な事例やイラストを参考にKY(危険予知)活動をすることで、例えば、作業員の「溶接時、やけどをする」という抽象的なリスクの発言が、「溶接時、鉄筋に触って感電する」といった具体的な発言に変化し、「何をしてはいけないのか?」をより自分ごととして理解された成果が確認できた。

「SpectA KY-Tool」の開発をリードした井戸プロダクトマネージャーは、「KY活動の本質は、作業員の方々に危険への感受性を高めてもらうこと。この本質を追求するためにはどんな機能を盛り込んだらいいのかということを、数百社へのユーザー調査を基に徹底研究しています」と明かす。

建設現場における「SpectA KY-Tool」の用途は幅広く、日々のKY活動の他、施工前の工事内容に関する検討会、安全パトロールなどにも利用されている。

工事や作業ごとの災害リスクと対策が、“ジャストインタイム”で共有できるAI安全管理ツールとは桶田雅威 SOLIZE Innovations事業部  SaaS 推進シニアマネージャー

「建設現場では、危険情報をホワイトボードなどに書いて注意喚起するのも一般的ですが、『SpectA KY-Tool』をデジタルサイネージと連携させれば、リコメンドされた情報をそのまま表示することもできます。サイネージの表示内容は適宜切り替えられるので、情報伝達のマンネリ化を防ぐ効果も期待できます」と桶田雅威シニアマネージャー。

今後は、ピックアップした情報を生成AIが作業員に分かりやすく、実感しやすい言葉に置き換えてくれる機能も搭載する予定だ。この機能は、早ければ24年中にも搭載される予定である。

また、「SpectA KY-Tool」には動画を表示できる機能もある。SOLIZEは既に顧客の要望に沿ったVR(仮想現実)動画コンテンツの制作を行っており、引き合いもある。近いうちに、「SpectA KY-Tool」にてVR動画コンテンツも作業員の安全教育に活用可能となる予定だ。