少人数作業が増え、労災事故のリスクが増加

製造現場の人手不足は、極めて深刻な状況だ。足りない人手を補うため、作業のオートメーション化(自動化)を推進する動きは、ますます活発になっている。

だが、人が行っていた作業を機械に任せるようになったことで一人作業が増え、むしろ労災事故の発生するリスクが増加するという矛盾も浮き彫りになってきた。

「自動化に伴って、製造現場に配置される作業員の数はどんどん減っています。特に夜勤では、作業員を一人だけ配置する“ワンオペ”シフトで現場を回している製造業が多いです。カメラを導入している現場もありますが、常に映像を見ていなければ危険行動をその場で発見することが難しく、労災事故を招きやすくなってしまうのです」

そう語るのは、FORXAI事業統括部ソリューション事業推進センター スマートファクトリー事業推進部の京尾俊作部長だ。

どんなに自動化が進んだとしても、“人の作業”が完全になくなることはない。操作や原材料の送り込み、保守・点検など、必ず機械と人間とのタッチポイント(接点)がある。作業の過程で、うっかり機械に指を挟んでしまったり、点検中にピットに転落してしまったりする事故が起こり得るのである。

カメラと画像AIで作業員の危険行動を検知し“安全・安心のスマートファクトリー”を実現厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」を元にコニカミノルタにて作成
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「熟練した作業員が一緒にいれば、危険な動きは制止するものですが、誰もいない場合は、その動きが危ないのかどうかも分からないまま作業をしてしまいます。アルバイトやパートタイマー、海外からの労働者、高齢者などの作業員が増えている現場においては、習熟度のばらつきによってますます労災の危険が高まっているのです」と京尾部長は指摘する。

しかも、夜勤中に一人作業の作業員が万が一の事故を起こした場合、発見が翌日の朝になってしまうこともある。救えたはずの命が、発見遅れのために失われてしまうといった悲劇にもつながりかねないのだ。

京尾部長は、「1972年の労働安全衛生法の制定以来、大半の製造業は法令順守の観点から職場環境における安全衛生の強化に取り組んでいますが、ESGやSDGsを重視する時代の要請とともに、経営における労働安全衛生への取り組みは重要度を増しています。『安全最優先』を表明し、従来から熱心に取り組んでいる企業は、環境整備や作業の見直し、従業員教育などを十分に行っていますが、人手不足という社会課題の深刻化とともに、より高いレベルでの労災対策が求められているのではないでしょうか」と語る。

次ページからは、製造現場における労災事故の6割を占める『進入』『走行』『転倒』の三つの動きを検知し、これらの防止に貢献する「ADDSAFE」(アドセーフ)の内容と効用を、具体例を交えつつ詳しく紹介する。