「アラブの春」は、ソーシャルメディアの発達と市民の覚醒が結びついて起こったという見方がある。そしてビジネスの世界でも、同様のことが起きているという。顧客の「目覚め」に企業はどう対応するべきか。過去の歴史から得られる教訓を見てみよう。


 過去数十年を通して、東欧やアフリカの一部で大きな「目覚め」が見られた。2010年には、チュニジアで野菜を売る露天商が政府の抑圧に抗議し、政府庁舎の前で焼身自殺した。これを発端に中東全体で反政府運動が広がり、「アラブの春」が起こった。

 ビジネスの市場は、多くの点で実社会とは大きく異なる。しかし今日のようにネットワーク化された世界では、共通する点も多い。具体的には、多くの企業が顧客の「目覚め」に直面している。たとえば、著名ブロガーでジャーナリストのジェフ・ジャービスが「My Dell Hell」(デルは地獄)の記事で痛烈なデル批判を行ったことを考えてみよう(英文記事はこちら)。また、ツイッターで150万人のフォロワーを持つヘザー・アームストロングが、「メイタグの悪夢」として同社の不適切な対応を詳細に報告した例もある(英文の関連記事はこちら)。両者ともメディアと顧客による炎上を引き起こし、企業の上層部を芯から震え上がらせた。

 経営陣や取締役会は、このような混沌とした、危険をはらむ新たな環境のなかで、どのように顧客とコミュニケーションをとるべきか迷い、茫然としている。あなたが大手銀行の経営陣だったら、フェイスブックページを立ち上げて、自行についての意見を誰にでも述べさせたいと思うだろうか。銀行業界全体についてはどうだろう。

 だが、多くの人が脅威と捉えていることは、実は大きなチャンスなのだ。そして、反政府運動から得られる教訓は、日々透明度を増していく私たちの世界に企業がどう適応すべきかを教えてくれる。

 社会にもビジネスの世界にも、コミュニティへの奉仕を目的とした組織がある。コミュニティを構成するのは、前者では市民、後者であれば顧客だ。そして、コミュニティが新たなアクセスを手にして組織に開放性を求める時、企業は経験不足のために対処方法を知らない。一方で政府組織は、数世紀にわたり経験を積んでいる。

 それらの政治的事象から何を学べるだろうか。まず、企業が新たな世界をどう捉えているのかを見てみよう。そして、政治的な目覚めのなかでおそらく最も成功した例、つまりアメリカ独立革命からどんな教訓が得られるか探ってみよう。そこから、より良いアプローチが見えてくるかもしれない。