日本では6月26日に発売されたiPhone 3G S。米国などでは、一週間早く6月19日に発売され、3日間で100万台売れたという。Photo (c) AP Images |
アップルのスマートフォンiPhoneの新モデル「3G S」が発売されて1週間あまりたった先週末、ニューヨーク5番街にあるアップルの旗艦店ではiPhoneを求める人々の長い行列ができていた。
昨年の夏、第2モデルが発売されて以降、iPhoneへの熱狂的な人気は時間とともに徐々に収まっていたが、ここに来て再び火がついた。スピードが速くなった3G Sはもとより、100ドルも安く99ドルに値下げされた旧型の3Gを買おうとする人々が殺到しているからだ。
アップルの発表によると、3G Sだけでも発売3日間で世界中で100万台を売り上げた。アナリストの予測によると、iPhoneの累計販売台数は2009年期末までに2000万台、2010年期末までに3000万台と、年々50%ずつ増加する。面白いのは、新型の3G Sへの注目度は高いものの、実際に販売数を大きく押し上げるのは99ドルの旧モデルだろうと専門家たちが見ていることだ。
スマートフォン市場におけるiPhoneのシェアは、世界合計では、昨年から倍増して約11%、アメリカではさらに大きく20%近くに達する。スマートフォン競合各社が高価な新機種を続々と市場に投入する中、アップルは「廉価」という予想外の変化球を投げてきたのである。
毎年6月末に開かれるアップルの開発者会議WWDCは例年、アップルの新製品や新OSの大きな発表が行われることで知られるが、今年のWWDCは「これまでになかったアップルの一面」が見えたイベントとなった。つまりアップルにとっては前代未聞の戦略といえる“価格破壊”だ。
アップルのコンピュータと言えば、これまで一部の物好きだけが高いお金を出して購入する高級製品だった。2年前に初めて発売されたiPhoneも、携帯電話の世界を永遠に変革したと言っても過言ではないほど革新的な機能に溢れていたが、その値段は当時599ドル。これがたった2年後の今年のWWDCで99ドルになったのである。これを価格破壊と呼ばずして、何と言おうか。
新モデル3G Sも、速度が速く、デジタル羅針盤、モバイル通信装置としての利用(テザリング)、ビデオ撮影・編集機能などがつくなど性能が格段とアップグレードされたにも関わらず、値段は実質的に据え置きの199ドル(8GB)と299ドル(16GB)だ。
WWDCではiPhone以外にも、新OSへの破格のアップグレード提供、旧型ラップトップの値下げなど、これまでにない価格設定が参加者をアッと驚かせた。「アップルがここまでやるか」という度を外れた「お得感」を演出して、アップル人気のモメンタムをさらに盛り上げようという魂胆が透けて見える。