前回は、企業が既存の新自由主義ベースの因果関係から移行し、新たな第2・第3の因果関係モデルに則って経営資源配分を行うか否かを左右する外部環境の変化を紹介した。今回は、包括的ビジネスにこれまで取り組んだことのない企業を念頭に、新規事業参入の可否判断プロセスのひとつのモデルを示す。


前回指摘したように、あらゆるビジネスはそれに従事する個々の企業の意図を反映したものであり、外部環境によって一律の形式で強制されたり推奨されたりすべき性質のものではない(当たり前)。よって、それら個別企業の意図を反映して、新たに包括的ビジネスに取り組む際の意思決定プロセスも一様ではないだろう。しかしながら、今回の論考では、個々の企業の実情に合わせて改変・修正されることを当然のこととして、そのたたき台となる一般的な意思決定プロセスを示してみる。

 参考までに、日本政府(JICA・JETRO)によって拡充されつつある「BOPビジネス支援スキーム」においては、企業の「BOPビジネス」への事業参入ステージがどのように捉えられているのだろうか。二つほど例示してみる。

 まず、JICAによる「BOPビジネス支援」に関する資料によれば、「BOPビジネス」の進展ステージは、1)調査研究フェーズ(情報収集/市場調査等)、2)ビジネスモデル開発フェーズ、3)ビジネスプラン策定、4)事業実施、5)事業拡張の5段階とされ、そのうち初期3段階を支えるのがJICAによる協力準備調査(FS)支援策の対象になるとしている。またJICAとJETROによる共同支援スキームの下では、「BOPビジネス」の展開プロセスとして、1)事業計画段階(案件組成→市場調査→事業化基本設計)、2)事業化段階(事業環境整備、事業化詳細設計、試行展開)、3)確立・拡大段階(本格展開→評価→横展開)と整理している。