残されたご家族の生活や、事業を維持するため、相続税を少しでも抑えようと考えるのであれば、相続財産の評価額そのものを減らすしかありません。そのとき最も効果を発揮できるのが不動産の活用です。相続税評価額は、実際の資産価値よりもかなり低く抑えられる傾向にあり、不動産購入に当たって借り入れをすれば、その借入金が負債額として遺産総額から差し引かれます。この二つの効果を併用することで、評価額を大きく圧縮できるのです」
そう話すのは、有栖川アセットコンサルティングの鈴木子音代表取締役である。同社は東京の広尾で、富裕層向けに不動産を中心とした資産戦略コンサルティングを提供している。
なぜ富裕層こそ不動産活用による相続対策が有効なのか。評価額の圧縮とともにメリットとして考えられるのが、遺族に譲り渡しても負担にならないという側面である。
「富裕層の中には、相続対策とは関係なく、あえて財産を現金ではなく不動産に換えて継承させたいと考える方もいます。なぜなら、現役世代の子どもに一度に多額の現金を継承すると、良くも悪くも子どもの生き方に大きな影響を与えてしまうから。年金のように一定かつ適度な収入を受け取れる仕組みとして不動産を利用したいと考える方も多いのです」
そもそも不動産は決して節税のための道具ではない。本来的には低リスクで手堅く資産を守り増やす性質を持つため、平時から運用することに向いている投資資産なのだ。