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ミドリムシで食糧やエネルギーの問題を解決するという志をもとに始まった、東大発バイオベンチャーのユーグレナ。このたび、スタンフォード大学アジア・米国技術経営センター「ジャパン-USイノベ―ション・アワード」『エマージング・リーダー』に選出された(これまでツイッターやスクエア、DeNAが受賞)。DHBR本誌特集「起業に学ぶ」を受け、このたび、社長である出雲充氏の創業期の奮闘を記した著書の一部を、短期集中連載として特別に公開する。
くだらないものなんて、ない。
くだらないものなんて、ない。
僕がこの本を通してお伝えしたいことは、この一言に尽きる。
地球はいま、危機に瀕している。
日本で平和に暮らしているとそんな実感はないかもしれないが、ちょっと調べれば、僕たちの孫やひ孫の世代が、僕たちと同じような生活を営めるかと言えば、たいへん難しいことがわかる。
日本では少子高齢化、そして人口減少が問題になっている。しかし国連の予測では、今後、世界人口はますます急激に増えていき、2100年には100億人になるとされている。
人口の増加にともない、深刻化するのが世界各地での栄養不足だ。コメや小麦などの炭水化物だけでは、人間は健康に生きられない。野菜や肉や魚をバランスよく食べることで、ビタミンやタンパク質を摂取することが必要なのだが、そのような食生活を国民が日常的にできているのは、現在も一部の国に限られる。発展途上国の貧しい人々は、ほとんど穀物だけを食べて飢えをしのぎ、慢性的な栄養不足に陥っている。世界的に食料が不足するようになれば、その多くを輸入に頼っている日本も、いつまで「飽食」でいられるかわからない。
またこれからの世界でさらに激しい奪い合いとなることが確実なのが、エネルギーだ。現在、エネルギーの中心である石油は、しばらくはもつといわれているが、産油国の思惑によって、これまでのように安価に買える時代がいつまで続くかは不明だ。現にここ数年、石油が投機の対象となり、価格がたびたび乱高下して、街のガソリンの価格もずいぶん高くなっている。
さらに石油エネルギーの大きな問題は、燃焼による二酸化炭素の放出によって、地球温暖化を引き起こすことだ。国際機関IPCCの調査によれば、この1世紀で世界の気温は0・7度上昇し、今後も同じペースで石油を使い続ければ、50年後にはさらに2度から5度上昇するといわれている。そうなれば世界の気候は激変し、各地が砂漠化して、農産物の生産に壊滅的な打撃を与えるだろう。
石油に代わるエネルギーとして期待されている太陽光や風力では、エネルギーの効率が低すぎて、自動車を動かすこともジェット機を飛ばすことも不可能だ。島国である日本が世界とつながるためには、飛行機が、そしてジェット燃料が不可欠。飛行機が飛べない鎖国した日本の未来など、想像したくもない。