2040年までのグローバル市場の方向性を示すものに、3分野、10のメガ・トレンドがある。第一の分野「気候、エネルギー、資源分野」においては、環境保護主義と並んでもうひとつ、特筆すべきメガ・トレンドがある。それが「資源をめぐる戦い」だ。昨今の世界の政治情勢を考えても、この問題はクリティカルである。ブーズ・アンド・カンパニーの好評連載、第5回。

 

第2のメガ・トレンド
資源をめぐる戦い(Race for Resources)

 国際エネルギー機関(IEA)などの予測では、世界のエネルギー需要は2040年に向けて2010年対比で33%増加する。これは人口増(+28%)を上回るペースとなる(図表1参照)。しかし、それでも資源や化石燃料の枯渇に関して、産出量・埋蔵量など理論的な観点からは、2040年までに本質的な欠乏に陥る可能性は低い。シェールガス採掘技術の進歩により北米のエネルギーの供給環境は大きく変化したが、他分野でも同様に技術進展により産出量・埋蔵量は今後も大きく増加しうる。

 しかし、理論的に資源枯渇がまだ起きないとしても、それを見越した争いはすでに激化している。すなわち資源ナショナリズムである。資源は世界の需要に応じて均等に埋蔵されているわけではなく、特定の地域に偏在している。石油ショック当時から、自らの資源の利益を他国が享受することに対する拒絶反応や、自らの資源の利益は自ら享受するべきであるという資源国の主張が強まり、その傾向はさらに拡大している。最近のレアメタル問題でもあったように、資源ナショナリズムの傾向は石油以外の天然資源全体にも拡大し、国際問題の駆け引きの一つとすらされている。将来的な資源枯渇への認識が、資源を持たない先進国の危機感をあおり、逆に資源を持つ国に自らの財の重要性を再度自覚させ、この傾向を助長している。