グローバルに世界がつながり、国の境界があいまいになりつつあるなか、第3の分野「社会と文化」は長期的な展望に欠かせない。4つのメガ・トレンドの最初に、「パワーシフト」を紹介する。2040年の世界を示すブーズ・アンド・カンパニーの好評連載、第10回。


 これまでの歴史のなかで、社会や文化は「国」という単位ごとに見ることが一般的であった。「国」は歴史や気候、風土を共有するくくりとして形成されることが多かったからである。しかし近年、人の移動がより容易になるとともに、「国」の単位を超えて文化が融合・共有されるようになってきた。また、それ以上に圧倒的に多くの情報が国境を越えて流通し、個々人がインターネットを通じて発信するようにもなってきた。このような背景から、社会と文化の分野では、社会の力関係から見た「パワーシフト」と「賢くなる個人」、個々人の嗜好や生き方、関係性としての「ライフスタイル変革」と「ネットワーキングと生産性」の4つが注目するべきメガ・トレンドとして挙げられる。

第7のメガ・トレンド
パワーシフト(Shift of Powers)

 今後の世界では、従来の力関係が変更される「パワーシフト」がいくつかの側面で起こる。このパワーシフトは、前述したような人口動態の変化、富の再分配、資源におけるメガ・トレンドに起因するものであり、その影響は地域や国家間の力関係、政治制度や宗教・文化に関する力関係、国家という単位とは異なる制度・システムとの関係などに及ぶ。

 地域や国家間の力関係としては、たとえば中国の経済力拡大にともなって、米国との政治的な力関係が変化し、アジアの周辺国との関係性に軋轢をもたらし始めている。また、G8がG20に拡大されたことに象徴されるように、先進国としての欧州と日本の存在感の低下が今後も予期される。一方で、アフリカ・インド・資源国の役割と影響力拡大が予想されている。国家間協力や同盟関係も、この影響を受け新しいものが増えていく。たとえばアフリカ(サハラ以南)諸国の輸出額は増加しているが、輸出先としては中国の比重が徐々に高まっており、その品目では原油および天然資源の比重が高い(図表1、2参照)。このように、新興国・途上国間での資源にかかわる協力・同盟も増えていくことが考えられ、西欧的(民主主義的)ではない価値観の諸国間での軋轢も生じやすくなる。