2040年までの世界の方向性を示すブーズ・アンド・カンパニーの好評連載も、いよいよ残すところあと2回。本連載の締めくくりとして、10のメガ・トレンドから見えてくる成長機会について述べる。

 

 ここまでの連載で10のメガ・トレンドを各々見てきたが、そこから見えてくる成長機会とはどのようなものだろうか。まず言えることは、世界の人類は今後大きな課題に直面するということであり、その課題を解決することができれば、グローバルに見て大きなビジネスチャンスになるということである。

 かつて1970年代、「あと30年で石油資源が枯渇する」とか「このままでは環境汚染で地球は大変なことになる」といった未来予測が行われて大きな衝撃をもたらしたが、その予測は当たらなかった。なぜかというと、そうした悲観的予測の一方で、企業がビジネスチャンスを追求した結果、新たな石油資源の埋蔵が確認され、石油採掘技術が向上し、低燃費・低公害の自動車エンジンが開発され、公害対策の技術も大きく進歩したからである。

 我々のメガ・トレンドもまた、未来予測を当てるためのものではなく、大きなビジネスチャンスの存在を確認するためのものである。具体的には以下のようなビジネスチャンスが想定できる。

環境と資源に関連する成長機会

 シェールガスなどの非在来型鉱物資源は、従来型スーパーメジャーの巨大油田とは異なり、地場資本でも行える分散型・短期間採掘となるため、小規模・可動式・パッケージ型などの設備に対する技術開発が求められる。また、パイプライン流通のための鋼管や液化・再気化などの技術も重要になる。こうした技術を得意とする日本企業は多く、そうした企業にとっては大きなビジネスチャンスである。

 現在のシェールガス生産は北米中心であるが、今後は中南米やアフリカ、中国でも生産される可能性がある。ただし、シェールガス革命が日本のエネルギー供給を直接的に改善するということは期待できず、むしろエチレン生産などの事業は日本では立地しにくくなる。「日本」にとっての福音とはなりにくいが、関連技術を持つ「日本企業」が海外で行うビジネスにとってはチャンスが増えるであろう。

 ほかにも、新興国で急増するエネルギー需要を満たすには石炭火力発電を活用せざるを得ず、これの低炭素化の技術開発への期待が非常に高まる。この分野もまた、技術や実績に強みを持つ日本企業は多く、海外でビジネスチャンスが大きく広がる可能性がある。原子力技術がごく一部の欧米企業のノウハウに大きく依存せざるを得なかったことと対比して考えると、火力の分野はより多くの企業にビジネスチャンスが開かれているとみることができる。

 さらに、新興国(とくに低人件費地域)が工業化を進めるうえで問題となるのが電源の安定化であるが、こうした地域では集中型(系統型)発電だけではなく、安定電源を安価に提供できる分散型発電と蓄電の技術開発が求められる。この分野もまた、強みを持つ日本企業は多い。巨大エネルギー会社が支配するビジネスから分散型のビジネスに変貌するということは、小型で故障の少ない安全な機器を作れる日本企業にチャンスが開かれるということである