10のメガ・トレンドから見えてくる成長機会を実際にモノにするには、世界本社機能の確立や、自社の強みの再認識をベースに持ち、ゴール・イメージを明確に描く必要がある。ブーズ・アンド・カンパニーの好評連載、最終回。

 

 多くの業界では世界的な巨大合併が起きたり(製鉄業界、ビール業界など)、勝ち組が世界シェアを大きく伸ばしたりしてきた(携帯電話端末など)。しかし、これに対して多くの日本企業は完全に出遅れてしまい、国内市場中心の「ガラパゴス」で満足し、横並びの過当競争に陥ってきた。結果として過去40~50年のスパンで見ると、日本企業は増収・増益ながら、利益率を低下させ続けてきた。そうした状態を長期間にわたって肯定的に受け入れてきた企業は、今からメガ・トレンドに乗った成長戦略を採ろうとしても大きなカベに阻まれることになる。

戦略的な「世界本社」の必要性

 カベの1つは、身の丈のボトムアップ型の事業計画を各事業部に立てさせ、それを集計することをもって「成長戦略」と呼んできたことである。国内が高度成長していた頃はそれでも問題なかったはずであり、成熟経済においても問題なかったのかもしれない。しかし、新興国市場が急成長し、先進国市場とのバランスが大きく変わっていくなかで、そうした身の丈型の計画では「成長戦略」の役割を果たしえない。コーポレート主導で、メガ・トレンドを見据えた、グローバルな業界の将来像における自社の目指すべきポジションを考えることが必要になってくるのである。

 ではなぜ、このような身の丈型の計画が蔓延するようになったのだろうか。身の丈型は低成長の計画なので達成も容易であり、「居心地」がいいからである。しかし、これを繰り返していると、その事業において海外の競合に引き離されることになり、さらには全社で見てもまともな成長が期待できないために機関投資家から見放され、株価が低迷してしまう。

 こうした悪循環から脱却するには、コーポレート部門が事業部門に対してストレッチを促すことが必要になるが、残念なことに日本のメーカーの多くは人材を現場に集めているためにコーポレートの人材がきわめて薄い。そもそも日本企業の「本社」は「日本市場を主に見ながら、海外も見る」というスタイルか「海外のことは海外本部任せ」というスタイルであり、コーポレート部門には「世界本社」という機能も意識も欠落している。「世界本社」にグローバルな成長戦略を立案し、経営資源の再配分を行う機能を担わせるべきではないだろうか。

 ここでいう「世界本社」とは、グローバルな市場を俯瞰し、どの市場に、どの強みを活かして事業を展開するかを決める部門である。決して日本中心にものを考える部門ではない(日本地域を担当する本社は、北米本社や欧州本社などと同列の地域本社とすべきである)。さらには、事業別・地域別にストレッチした目標を掲げ、海外の競合に負けないレベルの成長をめざし、各部門の成長のための投資を行う部門でもある。海外企業とのM&Aやアライアンスを主導する部門でもある。