グローバルな顔ぶれが集うチームでは、文化的差異が理由で孤立するメンバーがしばしば見られるという。とくに欧米色の強いチームでは、アジア出身者が不利となる。異文化マネジメントの専門家モリンスキーが、多文化チームをうまく率いるためのヒントを示す。国境を越えた人材の流動化が進む日本企業にとっても、参考となるはずだ。


 多様な文化的背景の人々で構成されるチームは、今日のビジネス環境では至る所に見られ、それについて書かれた文献も多い。しかし、多文化チームをめぐる議論でしばしば抜け落ちているのが、個人の経験である――特に東アジア文化の出身者の事情だ。彼らは、英語が共通語となっていて西洋文化の規範に基づいているチームでは不利な立場にある。

 次のケースはかなり典型的なものだ。

 中国出身のジンは最近、ニューヨーク市で経営コンサルタントとして新しい職に就いたばかりである。彼はすぐに2つのプロジェクトチームに配属されたが、両チームはアメリカ、ドイツ、オランダの出身者たちで構成されていた。彼は一生懸命によい印象を与えようとしたが、欧米色の強いこの多文化チームにおいては、その努力に限界を感じた。同僚のコンサルタントたちは、自分を強く押し出し、自信と熱意を持って意見を表明する。順番などお構いなしに話し、しばしば互いの話をさえぎるし、会話に割り込んでくることもある。

 中国では、コミュニケーションの取り方は大きく異なっており、順序よく交互に話すことが重んじられる。1人が(通常はチーム内で最も上位の人が)話し、他の人は礼儀正しく耳を傾ける。その後に他の人も意見を言えるが、常に上司の「メンツ」を脅かさないようなかたちをとる。

 ジンの欧米流ではないコミュニケーションのスタイルは、業績評価でマイナスとしてなった。彼の上司は「自信に欠けている」「チームプレーヤーではない」「チームの議論に積極的に参加しようとしない」といった言葉を用いた。しかしジンは、そんなことはないと思っていた――自分には自信もあるし、チームプレーヤーで、グループの議論への参加意欲もある。また、この欧米色の濃いチームに自分のスタイルを適応させる努力をしてきたとさえ思っていたのだ。

 こうした努力は気づいてもらえなかった。ジンはそれを知って傷つき、どこに問題があったかを知りたいと思った。新しいポジションで成功したかったが、チームの文化という壁が立ちはだかっている。文化的な間違いや言葉の不自由さを恥ずかしく思いつつも、そもそも順応を迫られることに不満や腹立ちを覚え、グループから疎外されているとも感じていた。

 残念ながら、異文化混成のチームで働く場合、ジンのような苦い経験を味わうことは珍しくない。しかしチームリーダーは、次に挙げる4つのヒントに目を向ければ、こうした問題を回避してメンバー全員の成功に手を貸すことができる。