現地パートナーにグローバル戦略を説明する際は、そのつもりはなくても相手から傲慢に見られてしまいがちだ。KFC、ペプシコ、P&G、イーベイなどでマーケティング担当幹部を歴任してきた筆者が、コミュニケーションの要諦を語る。

 

 私は自分のことを、いわゆる「傲慢なアメリカ人」だと思ったことはない。しかしイギリスの同僚たちはそうではなかったようだ。

 ペプシコが1986年にKFCインターナショナルを買収した直後、私(ペプシコのマーケティング担当幹部)はアメリカからイギリスへと異動になった。イギリスでのKFC運営会社とペプシコの合弁事業で、ヨーロッパおよびアフリカ地区のマーケティングを率いるためだ。私が一員となった新しい経営チームは、10年間衰退の一途をたどっていた創業約60年の企業を立て直そうしていた。

 イギリスのKFCはフランチャイズ制(FC)が中心であったため、我々ペプシコが買収前から計画していた新たなブランド戦略について、FC店から賛同を得ることが重要だった。私は多大な労力を注ぎこんで、FC店の経営者たちに向けた最初のスピーチを準備した。聴衆のなかには、全キャリアをFC事業に費やしてきた人たちもいる。

 当日のプレゼンで、私は財務状況の悪化について簡単に振り返り、事業再建に必要な消費者向けの3つの戦略的取り組みを説明した。そして、これを実現させるために協力してくれるようFC店経営者たちに熱く訴えた。彼らは自分たちだけでしばらく話す時間が欲しいと願い出たので、私は部屋を出た。やがて、FC店グループの代表であるキースが話し合いの結果を伝えるために出てきた。

 彼は最初によい知らせをくれた。「キップさん、私たちはあなたを好ましく思っていますし、提言の内容も気に入っています。あなたをサポートします」。私は大きく安堵のため息をもらした。だがキースは次のように続けた。「ただし、あの部屋にいる人たちは生涯をかけてこの事業を築いてきたことを、あなたには覚えておいていただきたいのです。困難な状況にあるとしても、私たちは馬鹿ではありません。もしあなたが再び私たちを見下すようなことがあれば、この関係は正式に終わります」

 これは貴重な教訓だった。

 これまでのキャリアを通して、私は65カ国でグローバル・ブランド戦略の導入に取り組み、その成功に必要な3つの原則を学んできた。