「私の後輩たちがとんでもないことをしてしまいました。本当に申し訳ありません」

 経済評論家の水城武彦氏は、生放送の冒頭でこう語ると深々と頭を下げた。筆者のキャスターを務める生放送番組、『ニュースの深層』(朝日ニュースター)でのことだった。

 水城氏は、NHK経済部記者から解説委員(経済担当)、そして退職後は、証券取引等監視委員会委員などを経て、今年4月から松本大学の学長に就任する。困難な時期にあえて生番組への出演を快諾してくれた潔さは、さすがに局内でも評判の「人格者」として通っていただけのことはある。橋本元一NHK会長以下、多くの理事が謝罪会見から逃げようとし、恋々としてその地位にしがみつこうとしたのとは対照的だ。かえって部外者である水城氏の方が、謙虚に「謝罪」を行い、説明責任を果たそうとしているようにすらみえる。

「他にもいるのでは」と
疑われるのも無理はない

 残念ながらこうした傾向は、2004年に始まった不祥事以降、NHKでの不変の法則となりつつある。どんなにまともな職員でも、NHK内での出世の階段を上がれば上がるほど、謙虚さが失われ、与えられた地位に恋々とするようになる。巨大組織の構造がそうさせるのだろうか。あるいは経営者個人の資質の問題なのだろうか。

 いずれにせよ、90年代半ばの約2年間、NHK報道局の一員として働き、2000年以降は海老沢勝二前会長を中心とするNHK取材を続けてきた筆者が、率直に抱く感想がそうである。

 さて、今回のNHK記者らによるインサイダー取引疑惑は、またしてもそうしたNHKの「正体」を世間に晒すことになってしまった。