女子美術大学付属高等学校・中学校
並木憲明主幹教諭・広報部主任

 女子美術大学付属高等学校・中学校は近年受験者が急増し、注目度も一段と高まっている。もともと「絵を描くこと・ものを作ること・美術や芸術が好きな生徒」をアドミッションポリシー(求める生徒像)に掲げ、ある意味で“人を選ぶ”学校だ。それでも人気が衰えない理由として、並木憲明教諭は「時代の変化」を挙げる。

「今日では、デザイン思考やアート思考と呼ばれる、既成概念を打ち破るような創造的感性が求められています。当校が注目される理由は、まさにこのような感性を育む場として評価していただいているからではないでしょうか。また、極端に行動が制約されたコロナ禍を経て、親が子どもには伸び伸びと好きなことをしてほしいと考えるようになったことも一因だと思います」

 自由な校風が色濃く反映された校内には、美術室が10カ所も。学校行事も美術に関連したものが多く、中1・中2・高1で実施される春季旅行では屋外でスケッチが行われ、修学旅行では日本美術を鑑賞する。6年(3年)間の集大成として、高3は卒業制作に取り組む。卒業制作展は東京都美術館で展示されるとあって、学校中の注目を集める。

 とはいえ同校はあくまで普通科の学校であり、豊かな感性を支える土台としてリベラルアーツ(教養)の習得を重視。その中にも随所に同校らしい独自のカリキュラムが取り入れられている。例えば、英語では「アート・イングリッシュ」と呼ばれるオリジナル授業を導入。英語教育で「美術の知識を活かして活躍する人」の育成を目指し、ネイティブ教員と共に少人数でアート用語や表現などを学ぶ。高校ではオンライン英会話も取り入れ、自分の作品の魅力を英語でプレゼンテーションしたり、独創的なアイデアを世界に発信したりできるレベルのスピーキング力を磨く。

型にはめることなく
“相似形”で大きく育む

 そんな同校に通う生徒は「美術が好き」という共通の思いを抱いて入学してくるが、「実に多彩な子がいます」と並木教諭は話す。「個性的で一風変わった子も多いですが、学校ではそれぞれが自分の居場所を見つけて楽しそうに過ごしています。卒業後は系列大に進学する生徒が全体の約85%を占めていますが、進学理由を聞くと『環境を変えたくないから』という声が多く聞かれます」と並木教諭。

 この強い愛校心は、まさに生徒を型にはめようとしない同校の教育方針に由来している。
「それぞれの生徒の個性の原形はそのままに、“相似形”で大きく育てていくことを目指しています。だからこそ生徒は“好き”を全力で追求することができ、私たちもそれを全力でサポートしていきます」(並木教諭)

「好きこそ物の上手なれ」の精神を体現する女子美生の個性と感性は、これからの時代、ますます求められていくはずだ。

エントランスギャラリーに飾られた2024年度の卒業制作の作品。「お絵描きが好き」から始まり、濃密な6年(3年)間を過ごす中で、生徒たちの技量は大きく成長する
●問い合わせ先
女子美術大学付属高等学校・中学校
〒166-8538 東京都杉並区和田1-49-8
TEL:03-5340-4541
URL:http://www.joshibi.ac.jp/fuzoku/