富士見中学校高等学校
善本(よしもと)久子校長

 富士見中学校高等学校の創設者・山崎種二は米商(ヤマタネ)や証券会社、美術館(日本画専門の山種(やまたね)美術館)を立ち上げた実業家で、同校は安定した財政基盤の下で着実に進化してきた。2024年度に着任した善本(よしもと)久子校長は「社会に貢献できる自立した女性の育成」を掲げ、学校のさまざまな資産を生かした教育を展開している。

 その一つが「米を中核とした探究学習」だ。「米は日本文化の象徴で、食糧生産や地球環境の問題と深く結び付いています。24年度からキャンパスの南側の日当たりの良い庭に田んぼを作り、田植えや稲刈りを体験。千葉の農家と契約して本格的な米作りにも参加しました。収穫した米は文化祭で“富士見米”として販売し、生産する大変さや経済の仕組みを学びながら、都市型農業の未来探究も行っています」。

 もう一つ力を入れているのが「金融教育」。24年度は生徒チームに仮想の1000万円を与え、社会課題に関係する企業に投資するゲームを実施した。単に利益を競うのではなく、投資対象の社会的意義も評価するのが特徴だ。25年度から校内に「ファイナンシャルセンター」を設置、証券会社出身の職員を採用して本格的な金融教育を推進する。

「女性は経済的に弱い立場に置かれがちで、ライフイベントの影響も受けやすい。目標は自分の欲望と経済をマネジメントし、自分と他者の幸せのためにお金を適切に活用できるようになること。女子校だからこそ金融リテラシー教育は大切だと考えています」と善本校長は意気込む。

 さらに「芸術教育」にも力を入れる。同校には創設者が収集した400点以上の美術品が所蔵されており、日本の近代日本画を代表する画家たちの作品が多数ある。それらの美術品を企画展示しつつ、中高でほとんど学ぶ機会のない「日本画」の創作を授業に取り入れる。日本文化を深く理解し、世界に発信できる生徒を育てるためだ。

高大連携による
先進的な学びも推進

 近年は大学との連携を強化。東京理科大学との連携では、3Dプリンターを活用した課題解決型学習を推進。また日本女子大学と連携し、教育学や心理学、社会学などの文系分野における探究活動もスタートする。

 心理的なサポートの充実も大きな特徴だ。スクールカウンセラーが週6日常駐し、気軽に利用できる工夫を施している。養護教諭に加えて専任看護師も常駐、健康管理にも気を配る。進路に関しては、探究活動の成果を生かせる総合型選抜を利用して、難関国公立大学へ進む生徒が増えているという。

「本校の生徒たちは活発で明るく、他者への共感力を持つ生徒が多い。一言で言うならば、“気持ちの良い生徒たち”。本校の伝統を大切にしながら、革新的な学びを提供し、次代を担う女性の育成に力を入れていきたいと考えています」(善本校長)

キャンパス内に田んぼを作り、田植えや稲刈りを体験する生徒たち。収穫した米は“富士見米”として文化祭で販売され、大好評だった
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富士見中学校高等学校
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