
平野 豊校長
約400年もの歴史を刻む泉岳寺の中門をくぐり、桜の古木が連なる小道を抜けて生徒たちは校舎に至る。随所に歴史の匂いを感じさせる周辺環境は、高輪中学校・高等学校の魅力の一つだ。高輪ゲートウェイシティの開発が進む中、生徒たちは「地域の新たな歴史の一端を担う存在として、さまざまな活動に意欲的に取り組んでいます」と語るのは平野豊校長だ。
例えば、折紙同好会は地域イベントでワークショップを開催し、旅行・鉄道研究部は駅ビルで模型展示を行うなど、街と学校が有機的に結び付く機会が増えている。また、開発工事で出た土を用いたホップの栽培には理科研究部が関わり、街の「今」を肌で感じながら、それぞれの関心と好奇心を発揮している。
その原動力となっているのが、教育理念「自主堅正」である。自ら考え、主体的に行動する姿勢を大切にするこの校訓の下、生徒たちは日々学び、挑戦を重ねている。象徴的なのが、生徒自身が立ち上げた「学校PR委員会」だ。生徒主導で学校説明会を企画・運営し、自らの言葉で学校の魅力を語る。「普段幼く見える子も、外部の方に対して丁寧な言葉遣いでしっかりと話しています」と平野校長は頬をほころばせる。
こうした主体性を育むためには、生徒が安心して自我を表現できる環境が不可欠なのだが、同校では1学年6クラスに対し、担任と所属教員を含め11人の学年スタッフが6年間を担当。教員は「目を離さず、見守る」教育を実践していく。
「高学祭」(文化祭)で、あるクラスが教室内にジェットコースターを設置するという大胆な企画を実現させた。「安全面からすれば通常は難しい発想なのですが、教員は生徒と共にリスクを洗い出し、安全対策を講じながら実施へと導きました。その姿勢は、生徒の『やってみたい』を真剣に受け止める教員の覚悟に他ならないと思います」と平野校長。本気の姿勢と信頼関係があればこそ、「まずは挑戦しよう」というメッセージが生徒の心に響く。
地域の国際化を期した
グローバル教育の強化
昨年、高2が全員参加する「海外学校交流」でオーストラリアに帯同した平野校長は、生徒の変化に驚いたという。「多くの生徒が、ホストファミリーと臆することなく英語で会話を交わしていたのです」。これは、一昨年から導入されたオンライン英会話の取り組みの賜(たまもの)だという。週に1度、授業の中で実施されるこのプログラムにより、生徒たちは英語を「使う」習慣を身に付け、言葉の壁を越える自信を得たのだ。生徒たちの学びをさらに豊かにすべく、同校では、海外語学研修や留学制度の充実、交換留学生の受け入れなどを積極的に進めていく予定だ。国際会議場はじめ街ぐるみの国際化が進む高輪の地を舞台に、さらなる国際交流の機会創出が期待される。
