玉川学園中学部・高等部
中西郭弘(かつひろ)中学部長

 玉川学園中学部・高等部は、創立者・小原國芳が掲げた「全人教育」の理念を今に受け継ぐ学び舎(や)である。創立者の言葉「百聞は一見に如(し)かず、しかも百見は一労作に如かず」は、理論だけにとどまらず、実践を重視する同校の姿勢をよく表している。

「私たちは中学部で、『触れて、感じて、表現する』というシンプルな言葉で全人教育を伝えています」と語るのは、中西郭弘(かつひろ)中学部長だ。「学びにおいては、まず興味を持つこと。ワクワクしながら授業に向かうことが大切です。そして、学んだことをプレゼンテーションという形で表現する。そうすることで、知識は単なる情報ではなく、自分自身のものとして深く根付いていくのです」と中西中学部長は続ける。

 加えて、「人間の丸み」を育む生活指針として「玉川しぐさ」を提唱している。「気が利いて、即行動する、相手に恥をかかせない、そういった粋な振る舞いを『玉川しぐさ』と呼んでいます。これは、創立者の言葉『人生の最も苦しい、いやな、辛(つら)い、損な場面を真っ先きに微笑(ほほえ)みを以(も)って担当せよ』を現代的にかみ砕いたもの。皆が嫌がることを率先して引き受けると、その楽しさに気付いて新しい自分を発見したり、人望を得たり、チャンスをつかむこともあります」(中西中学部長)。

通常授業で問題意識を育む
96年にわたる探究学習

 探究学習が全科目に浸透しているのも大きな特徴だ。「創立当初から『自由研究』を軸に、自学自律の精神を育んできました。授業では『なぜ、そうなったのか』を常に問い、思考を深めることに重点を置いています」(中西中学部長)。

 この姿勢は、企業と連携する「特別授業」にも表れている。2024年には、飲料メーカーのダイドードリンコと協働し「未来の自動販売機を提案する」というテーマで中学2年生がコンペティションを行った。

 第1位に輝いたグループが提案した自動販売機は、外国人旅行者の余剰通貨を活用するだけでなく、使用済み容器のリサイクル、地域雇用の創出、さらにはフェアトレードで輸入された茶葉と国産茶葉をブレンドした商品の提供といった、地方創生と世界の社会課題解決に貢献する多角的な視点に基づいたアイデアであり、企業担当者を驚かせたという。

「課題発見力と解決力は、一朝一夕では育ちません。日常的に関心の幅を広げ、論理思考を鍛え、表現する積み重ねが大切です。本校はそのための探究学習を通常授業に組み込み、意欲ある一部生徒だけではなく、全ての生徒がこの探究の場に触れて、自分の可能性を試せることが強みであると自負しています」と中西中学部長は自信を込めて語る。

 知識を単に蓄えるのではなく、それを社会とつなげ、よりよく活用する力を育む──玉川学園中学部には、そんな教育が日常として息づいている。

ダイドードリンコとの特別授業の様子。過去には貝印、セーラー万年筆、サーモスなど、さまざまな企業との独自授業を実現している
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玉川学園中学部・高等部
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