玉川聖学院中等部・高等部
安藤理恵子学院長

 玉川聖学院では、キリスト教に根差した教育を基盤に、「心の教育」と「体験を通した学び」を大切にしている。体験を通した学びでは、人との出会いを重視する。

 例えば毎年夏に行われている「ボランティアキャンプ」では、岩手県の被災地を訪ね、高齢者との交流を行ってきた。東日本大震災の翌年から始まったこの活動は、被災地のキリスト教会のネットワークと連携して実施されている。生徒たちは現地の人々と対話をする中で、「助ける側」としてではなく、むしろ「学ばせてもらう」姿勢を身に付けていく。

 体験を通した学びで、人生の進路が決まるケースもある。ある車椅子の生徒は、高1の施設訪問の行事で、車椅子の女性の介助をすることになった。“普段は気難しい性格と知られていたその女性が、自分には心を開いてくれた”という経験をそこでした。

「その気付きを基に、『私だからできること』をテーマに弁論大会に出場、東京大会で優勝し全国でも2位になりました。彼女は卒業後、車椅子のままでも着られるウエディングドレスのデザインを手掛けたり、モデルとして活躍したりして、障がいを“可能性を狭めるもの”ではなく“自分にしかない視点”として受け止め、自らの力に変えていったのです」と、安藤理恵子学院長は話す。

 また別の卒業生は、在学中に参加したボランティアキャンプで、岩手県宮古市を訪れた。被災者の話を聞く中で、自然災害の恐ろしさと同時に、人は自然の中で生かされているということも学んだ。この体験を機に「自然と人との間に立ち、気象を伝えられる人になりたい」と思うようになり、学びを重ねて気象予報士の資格を取得。現在はローカルのテレビ局で気象キャスターとして活躍している。

「彼女たちのように、自分の経験を動機に変えて進路を切り開いていく姿勢は、本校の教育が目指しているものです」と安藤学院長は話す。

体験や人との関わりを
重視した教育

 今、玉聖には、車椅子の生徒や、聴覚に障がいのある生徒たちが何人も在籍している。「違いのある」生徒たちがお互いに自然に受け入れ支え合い、「いろいろな子がいるのが当たり前」という空気が玉聖にはある。むしろ弱さを持つ友達の存在が、クラス全体に、共に生活するための工夫や優しさを生み出していく。

「人生は偶然に始まって、偶然に終わるものではない。そこには意味があり、誰かのために生かされているという視点を持つことで、自分の可能性に気付いてほしい。そんな生き方を、聖書を通して生徒たちに学んでほしいと思っています」と安藤学院長。

 近年、志願者が増えている玉聖。「体験や人との関わりを重視した教育」に価値を見いだす家庭が増えていることが、その背景にあるのだろう。

高1~3の希望者が参加する「ボランティアキャンプ」での1コマ。「助ける側」としてではなく、むしろ「学ばせてもらう」姿勢を身に付けていく
●問い合わせ先
玉川聖学院中等部・高等部
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢7-11-22
TEL:03-3702-4141
URL:https://tamasei.ed.jp/