
田中 望広報部主任
都市大付属は、多様な生徒が集まる環境を生かし、個々の成長を促す教育を重視している。特に帰国生の受け入れが特徴的で、学年定員240人のうち40~60人(約6人に1人)が帰国生という状況だ。他校では帰国生専用のクラスを設けることもあるが、同校ではあえて各クラスに分散させ(英語の授業の一部を「取り出し授業」として実施)、一般生との自然な交流を促している。これにより異文化に触れ、多様な価値観を学ぶ機会が生まれている。
「海外育ちの帰国生は、個人の意見をはっきり言ったり、自分の考えで行動したりします。それを見た一般生は、自分たちの“当たり前”を見直すきっかけになり、逆に帰国生は、日本の文化に適応していくことで、物事を柔軟に考えられるようになります。また一般生の中には“自分も海外で活躍したい”という意識が芽生える生徒もいます。帰国生が6人に1人という割合は絶妙なバランスで、理想的な形で学校全体の視野が広がっています」と話すのは広報部主任の田中望教諭だ。
2026年度からコース制の見直しがある。これまで上位層の「Ⅱ類」と一般層の「Ⅰ類」に分かれていたが、両コースの学力差が縮まってきたこともあってコース制を解消、入学時の学力差にとらわれずに、多様な生徒と交流できる環境を整えることになった。ただし中3以降は、大学受験を見据えて上位2クラス、一般4クラスの習熟度別クラスにする予定だ。
生徒の主体性を育む環境が
評価されている
進学実績を伸ばしている都市大付属だが、学力を上げることだけを目的とせず、「生徒の主体性を引き出す」ことに重点を置いている。「進路指導では、生徒の“スイッチを入れる”ことを重視。〝どうしたら一人一人の可能性を伸ばせるか”を考えています。高3では学年主任が生徒全員と面談をするなど、コミュニケーションを大切にし、教師陣がチームを組んでサポートに当たっています」(田中教諭)。
キャリア・スタディにも力を入れ、中3では社会人OBを招いて講演会を開いたり、OBの協力を得て職場体験を実施、最終的にキャリア・スタディ発表会を行う。
学校が一番盛り上がるのは「柏苑(はくえん)祭」。生徒たちが主体的に動き、自分たちの手でつくり上げるイベントだ。「24年のテーマは“Spark Your Fun”。自分たちだけが楽しむのではなく、来校者がどう楽しめるかを考えて行動しているのが印象的でした。本校の生徒は穏やかで、学校の雰囲気も落ち着いています。帰国生も海外でいろいろな経験を重ねているので、他人を尊重する気持ちが強い。勉強だけの学校としてではなく、生徒の主体性を育む環境が評価されていると感じます」と田中教諭。「6年間の過ごし方」が重視される時代、多様な生徒が共生する都市大付属の環境は魅力的だ。
