
奥田修司教頭
2025年度、高校からの募集を停止し、完全中高一貫校へと移行した。中学校の募集定員を拡充するとともに、隣接する東京農業大学稲花小学校から進学した約60人の児童を迎え、現在は総勢278人が学び舎(や)を共にする。
「異なる背景を持つ生徒同士が互いに刺激を与え合うことで、すでにさまざまな“化学反応”が生まれています。完全中高一貫とすることで、6年間の学びをより一貫性を持って提供できるようになりました」と語るのは、奥田修司教頭である。
新年度早々に実施された中1の宿泊研修では、山梨・河口湖畔を訪れ、飯盒炊爨(はんごうすいさん)や洞窟探検といった体験型活動を通して、生徒たちは協働しながら仲間との絆を深めていった。
教育課程の刷新も進んでいる。これまで中3を対象としていた北海道での自然体験研修は中1に繰り上げ、高2だった国内・海外選択制の修学旅行は、行き先をシンガポールおよびマレーシアに限定し、中3全員で実施する形へと再構築された。「中学時代に多様な体験の“引き出し”を蓄えることで、生徒たちはその後の成長でより深く学びに向き合えると考えています」と奥田教頭は説明する。
体験を通じて
学びの面白さを実感する
こうした取り組みの根幹にあるのが、創立以来掲げてきた教育理念「知耕実学」だ。これは、知識と実践を結び付け、自らの手と頭と心で学びを深めていくという考えだ。例えば、中1では田植えから除草、稲刈りに至るまでの一連の稲作体験に取り組み、中2では稲作体験を踏まえて新米と古米を比較、その違いを科学的に分析する。中3では発酵や麹(こうじ)の知識を深め、味噌(みそ)の仕込みを実践する。これらの体験はいずれも東京農業大学の関連施設や教授陣との連携の下に行われており、大学と直結した教育環境が大きな特色となっている。「体験を通じてこそ、学びの面白さを実感できるもの。その実感が、自ら進んで学ぶ姿勢へとつながります」と奥田教頭は語る。
中1から高1にかけては、各自が興味・関心を持つテーマを基に探究を行い、成果を発表する「課題研究発表」が行われる。生徒自ら大学研究室にアポイントを取り、教授の指導を仰ぐこともある。また、放課後に自由参加で行われる「一中一高ゼミ」は、学年や教科の枠を超えたテーマに取り組み、映画鑑賞やアウトドア活動、駅伝選手との交流会など、多彩な学びの場が提供されている。生徒自身が立ち上げたゼミもあり、こうした主体的な活動が、起業コンテストなどでの成果にもつながっている。
「生徒一人一人が主体性を持ち、目標に向かって努力を重ねている。それこそが、本校の教育の本質なのだと思います。今後も、そうした力を備えた生徒を育てていきたいと考えています」と奥田教頭は言葉に力を込める。

東京農業大学第一高等学校中等部
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