
夘木幸男(うのきゆきお)校長
急激な近代化が進む1892(明治25)年、女子教育の必要性を感じた浄土宗の尼僧・輪島聞声(もんじょう)が、東京・小石川にある伝通院(でんづういん)境内に生徒5人の寺子屋を創設した。小石川淑徳学園の始まりだ。受け継がれる校訓「進みゆく世に後れるな、有為な女性となれ」は、変化の激しい現代に通ずる精神だ、と夘木幸男(うのきゆきお)校長は語る。
「正解のない時代の今、女性はどういう生き方をすべきか。それは各個人ができることを主体的、創造的に考え、より多くの人と共に実行することです。一方、どんなにAIが発展しようとも人が生きる社会において人間力が基盤になることは変わりない」。同校では伝統の仏教情操教育をベースに、現代に必要な3領域プラスの力「探究力」「高い英会話力」「デジタルコンピテンシー」を育む。
「探究力」は主体的・創造的に考える力の源だ。実践的なプログラムを通じて自らの問題意識に基づく課題を設定し、納得解を導きつつ、他者と考え方の交換をして新たな価値を生み出す。「高い英会話力」は対話で自分の意思を伝えることを重視し、多様な発表・研修の機会を用意する。「デジタルコンピテンシー」は、デジタル技術の知識・スキルの習得はもちろん、デジタルコンテンツの作成力、適切な活用能力、問題解決力などを育むことを目標に設定。文部科学省・DXハイスクール採択校として、中央大学理工学部との連携教育も強力に推し進めている。
協働と創造のベースにある
「思いを伝える力」
3領域プラスの学びに通底するのは、思いを伝える力の重要性だ。「いかに正解主義のふたを外し、自分の内側で考えた生の声を発することができるか。それは時代の潮目に必要な“一歩踏み出す力”であり、他者に影響を与え創発性を生み出すベースにもなる」と夘木校長。入学当初は間違いを恐れ発表に苦手意識を持つ生徒も、きめ細やかに見守る伝統の少人数教育と教員の聴く力により、徐々に自分を表現できるようになるという。
2024年度から新たに取り組んでいる毎朝の英語学習では、中1は音声に耳を慣らす「English Sound Shower」を、中2以降は語彙力を積み上げる「English Spelling Shower」を実施。日々の学習成果を資格取得につなげ、中3の英検3級取得率は100%に達した。
そして、ネイティブ職員が常駐し、英語や日本語を母国語としない生徒たちとランチやおしゃべりを楽しめる「グローバルカフェ」もにぎわいを見せている。「異なる視点を持ち寄ったり、互いに教え合ったりすることで、全体的な学力の向上にも寄与している」と夘木校長。実地の学びからグローバルマインドセットを育みたいという。「本校の教養とは『知識×考える力』の総体です。広い視野に裏付けられた創造力や発想力、柔軟性といったマインドセットを基礎として、新たな時代を生き抜く力を育んでまいります」。
