昭和女子大学附属 昭和中学校・高等学校
大野智久教諭

 昭和女子大附属における探究活動は、2025年度から新たなコンセプトとして「つくる」を最上位の目標に据えた。それを実現するために、必要な四つの力「さぐる」「ねばる」「つながる」「ためす」を定義し、マインドセットとして「ふしぎがる」という姿勢を重視している。

「さぐる」は、信頼性の高い複数の情報源を活用して深く掘り下げる力を指す。「ねばる」は、さらに質を高めようとする姿勢を育むもの。「つながる」は、外部の人々や社会との関係性を築く力を意味し、「ためす」は、実践を通じて学ぶ姿勢を表している。そして「つくる」は、企画や仕組みなど、他者に届けるべき創造的な成果のこと。重要なのは、誰に対してどのような価値を届けたいかを明確にし、それを具体的な形にすることにある。

 探究活動を推進する大野智久教諭は、「このコンセプトは、単なるスローガンではなく、生徒や教員が日常的に活用できることが特徴で、例えば、生徒が活動中に『これは“さぐる”だね』と言ったり、教員が授業の中で『この場面は“ためす”が必要だ』と言及したり、実際の教育活動の中に浸透しています」と説明する。

探究コンセプトが
主体性を目覚めさせる

 従来から行われている「サービスラーニング」と呼ばれる探究活動は、世田谷区を中心とした地域社会をフィールドに、生徒たちが地域の課題を自ら見つけ、その解決に向けたプロジェクトを立ち上げるというもの。例えば、地元の農産物の知名度向上を目的としたスイーツ開発プロジェクトや、フィンランド視察を契機に、幼児向けのジェンダー教育教材(カルタ)を制作・普及させる試みなど。コロナ禍の影響もあり、目的や意義が曖昧になりつつあったが、新たな探究コンセプトが、今後の活動に再び明確な軸を与えるきっかけになったという。

「他にも、宿泊行事や文化祭などにおいても、“つながる”“ためす”といった探究の要素と結び付けることで、行事の教育的な意味が再定義され、教員や生徒にとって目的意識を持って取り組むことが可能になりました。コンセプトにある“五つの動詞”全てが生徒主体であることから、学校の活動そのものが生徒中心へと移行しています」。そう話すのは、長らく探究活動を担当してきた勝間田秀紀教諭だ。

 探究活動の新たなコンセプトは、生徒自身の興味や関心を掘り下げ、進路選択にも新しい視点をもたらす。探究活動での実践が、将来を考える行動にもつながっていくからだ。

 教員の役割が「教える」から「モチベートする」へと変化し、生徒たちの自由な発想と行動を尊重することで、生徒が自らの意思で動き始める例が増えている。「自分の人生を自分で面白くできる人間に育ってほしい」と大野教諭は期待を込めて語る。

「昭和女子の探究」は、「つくる」「さぐる」「ねばる」「つながる」「ためす」。誰にどのような価値を届けたいかを明らかにし、形にしてゆく
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