順天中学校・高等学校
片倉 敦教育支援センター長

 2026年度より、「北里大学附属順天中学校・高等学校」として生まれ変わる順天。医療・生命科学分野を中心に学術的実績を誇る北里大学の系列校として、順天の教育はさらに深化しようとしている。医療系・理系を志す生徒にとっては大きな追い風となる一方、進路の多様化にも応える多彩な選択肢が用意されている。

 1834年、和算家、天文学者である福田理軒が創設した「順天堂塾」を起源とし、順天は「順天求合(自然の摂理にしたがって真理を探求する)」という理念を受け継いできた。系列校化は、医学・薬学・看護学などの学部を擁する北里大学との連携を通して、その理念を現代的に発展させる試みとなる。成績や生活態度において一定の基準を満たした生徒には、内部進学という明確な選択肢も用意されている。

「医療系の大学だけに、高い倫理観、社会性のある生徒を送り出したいと思っています。本校はボランティア活動などの社会貢献にも力を入れており、『いのちを尊(たっと)び、生命の真理を探究し、実学の精神をもって社会に貢献する』という北里の理念とも響き合うのです」と語るのは、片倉敦教育支援センター長だ。連携はすでに動きだしており、24年度には各学部長が順天を訪れて学問内容を説明したり、中3が北里大学のキャンパスを見学したりと、中高大の一体的な学びの布石が打たれている。

四つの探究系コースで
課題解決力を身に付ける

 順天の教育の根幹にある「探究」を軸とした学びも進化する。26年度から高校では、生徒一人一人の進路志向に応じた四つのコースが設置される。

 内部進学を目指す「北里探究系(予定)」では、例えば大学との共同授業や実験など、高大連携を通じて学問への動機付けを図る。「理数探究系」では、科学実験やプログラミングを通じた論理的思考力の養成を重視し、「英語探究系」では国際的視野を持つ人材育成を目指す。「総合探究系」においては、社会科学・自然科学など多様なテーマを外部講師と共に探究する。

 こうした探究活動は単なる知識習得にとどまらない。自ら課題を設定し、調べ、考え、表現する経験は、大学入試の総合型選抜でも十分な強みとなる。「生徒によっては、探究した内容を入試の総合型選抜でアピールすることも可能です。ここで出合った問いを大学でさらに深めてくれれば、こんなにうれしいことはありません」(片倉センター長)。

 もちろん、探究の成果がすぐ進路に直結するとは限らない。それでも、片倉センター長は力を込めてこう語る。「理系でも文系でも探究の経験は、仕事上の課題や社会課題を解決したり、新たな研究成果を生み出したりする力につながるのです」。190年を超える歴史を背負いながらも、一歩を踏み出す順天。時代の要請に応える教育の真価が映し出されている。

中3が北里大学を見学。研究室を訪問したり、記念博物館で北里柴三郎が使っていた顕微鏡に触れたりと、医療分野を研究する奥深さを体感した
●問い合わせ先
順天中学校・高等学校
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