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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平が若者の政治エリート登用にメスを入れる狙い

加藤嘉一
【第84回】 2016年8月30日
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中国共産党成立の1年前に組織された
共産主義青年団(共青団)

エリート大学生のあいだで「今後共青団を通じて政治エリートになることは難しくなる」といった類の認識が広まってしまうようなことになれば、国際社会で普遍的に認識されるエリートという集団が中国で育成され、政治の舞台で活躍する道が閉ざされてしまう

  2005年4月9日、北京でいわゆる“反日デモ”が起きた。一部暴徒化したデモ隊が北京の日本大使館に向かって卵などを投げつけている光景を覚えている読者もおられるであろう。

 小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝反対、日本の国連常任理事国入り反対、“歴史の改ざん”反対などが、デモ組織者や参加者が横断幕として掲げる内容であった。少なくとも表向きはそうであった。デモ発生前、中国に進出している日本企業が、中国政府が“問題”としてきた歴史教科書を支援しているとして、日本企業やその製品に対する風向きが強まっていった情景を覚えている。デモ現場には、“日貨排斥”、“愛国無罪”といった掛け声が集団的に放たれていた。

 デモ発生直前の4月7日深夜、当時私が学んでいた北京大学のクラスメートと“反日デモ”が起こるプロセスに関して話をした。この学生は、9日の朝8時半には北京大学南門から徒歩10分ほどの場所に位置する中関村海龍大廈の前にデモ組織者が集まること、当日は公安が現場に入り、監視監督を行うこと、組織者には北京大学の学生が含まれていること、そして各学部の関連機関に対してデモには参加してはならない旨、当日、不当な言動を行う、あるいは行いうる学生に対する監視を強化する旨を伝達したことなどを私に語った。

 この学生は共青団北京大学委員会に所属する学生のなかの幹部であった。共青団とは共産主義青年団の略称である。同組織は1920年8月、即ち中国共産党が成立される(1921年7月)約1年前に結成された。その名の通り、青年(筆者注:日本語で俗にいう“若者”に近い)を対象とする組織で、一般の団員の場合、14歳で入団資格が得られ、上限は28歳と規定されている。団員の数であるが、2015年末の時点で8746.1万人(共青団中央組織部統計)となっており、同時点において8875.8万人に上る共産党員(共産党中央組織部統計)とほぼ同等の数を抱えている。

 大学時代から周りに共青団で働いていた同窓生が複数いたこともあり、私にとってこの組織は比較的身近に感じられる存在であった。彼ら・彼女らは、日々の学業以外に、共青団での仕事に奔走していた。

学生たちを洗脳するイデオロギー工作も
党と大学の架け渡し作業を行う共青団

 最も印象的だったのは、党と大学の架け渡しとしての作業である。共産党中央が発布するドキュメントを受けて、学生向けのそれを作成したり、学生を管理(実際は監視)するためのイベントや会議を組織したり、若干えげつない表現をすれば、学生たちを洗脳するためのイデオロギー工作をしたりといった作業も見られた。北京大学の国際交流を企画・実践するような仕事も共青団にとってのミッションであった。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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