これまで「正義の行動」として国内では好意的に見られてきた中国の「愛国主義的行動」だが、最近は人々の支持を失って、笑いの的となり、「愚か者」の烙印を押されてしまう傾向がある

「蠢貨」という言葉がある。日本語に訳せば「愚か者」という意味だが、南シナ海問題をめぐる一連の騒動が起こった際にネット上でよくこの言葉が見られた。ここでいう「蠢貨」とは、「日本製品・アメリカ製品ボイコット」を声高に叫ぶ「愛国者」のことを指す。

「愛国」という言葉は、領土問題など「核心的利益」に触れる問題が起きたときによく使われ、ネット上にその手のコメントが流れる。これまで、愛国は「正義の行動」と称えられ、多くの人々に広く支持された。

 なぜか。それには「歴史の記憶」がある。中国共産党の公式見解によると、中国はアヘン戦争以来、列強に国土を分割され、半封建・半植民地国家になったという。このことは古代から世界の大国として君臨してきた中国にとっては大きな屈辱だった。ゆえに、習政権は「中華民族の復興」を目指す「中国の夢」を説いているのである。

 だが、「愛国主義的行動」は以前のように「正義の行動」として好意的に見られてはない。

「愛国」を論じる言論や行為の多くは、瞬く間に人々の支持を失って笑いの的となり、「愚か者」の烙印を押されてしまうのである。

 この「愚か者」は、ネット民だけでなく『人民日報』や新華社など公式メディアにまで批判されることになり、ついには「愛国とは蠢貨(愚か者)を抑えることだ」という言葉がネット上で流行語となった。

 そこで中国のネット上で流れた主な「愛国的」文章を挙げ、ネット民がどのような反応をしたか、見ていきたい。

「中国は一番だ!」という愛国的コメントに
ネット民は薄い反応

 南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定が明らかになった翌日の7月13日にネット上の有名人である作家の咪蒙氏は「永遠に国を愛し、永遠に熱い涙を目に浮かべる」と題する文章を発表した。この文章の内容を簡単に紹介しよう。

 まず「最も良い愛国主義教育は海外へ行くことである」とし、外国の食べ物はたまに食べればおいしいと思うが、一定の期間が過ぎたらそうではなくなり、自国のものが食べたくなり、改めて自国の料理の良さが分かるのだと、自身の経験を交えながら述べている。