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出口治明の提言:日本の優先順位

実は医療費が多い国だった日本に「定年制の廃止」が必要な理由

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第147回】 2016年9月2日
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健康寿命を延ばす方法を医師10人に尋ねたところ、答えは異口同音に「働くこと」であった(写真はイメージです)

 僕は昨年8月に出版した「日本の未来を考えよう」の中で次のように書いた。「少ない医療費(≒G7の中では、医療費が最もかかるアメリカ、2番手であるフランス・ドイツ・カナダに次ぐ第3グループが日本・連合王国・イタリア)で世界一の長寿国を実現している日本は、これまでは非常に効率のいい医療制度を持っていた(P180)」と。

 ところが、8月4日に医療経済研究機構が公表した「OECD基準による日本の保健医療支出について」を読んでびっくりした。OECDの新基準(A system of Health Accounts 2011)に準拠して日本の保健医療支出を計算するとわが国の医療費はアメリカ、スイスに次いで世界第3位となり、G7の中ではむしろ医療費のかかる方の国になってしまっていたのである。

旧基準と新基準では6兆円もの開き

 まず、OECD35ヵ国の2014年度のデータを虚心坦懐に眺めてみよう。

 これを1人当たり保健医療支出に置き換えると次の通りとなる。

 わが国の2014年度の保健医療支出は旧基準でみると49兆2059億円だが、新基準でみると55兆3511億円と実に6兆円以上も上振れする。新基準と旧基準の主な差は、食事・入浴等のADL(Activities of daily living、日常生活動作)に関する介護サービスが計上されたこと等によるもので、先進国の中で最も高齢化が進んでいるわが国が直撃された形となっている。

 もっとも、諸外国が新基準に対してどのような対応を行ったかについてはまだ不明確なところもあるので、一喜一憂したり大袈裟に騒ぎ立てたりする必要はないだろう。ただG7の中で医療費の少ない国という思い込みだけは捨てたほうがいいと考える。新基準をベースに、わが国のこれからの医療制度の在り方を、一旦ゼロクリアして考え直すいい機会が与えられたと思えば、それでいいのではないか。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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