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野口悠紀雄 人口減少の経済学

日本の家計貯蓄はなぜ減少したのか

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第5回】 2010年11月12日
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 以下では、人口構造の変化との関係を念頭に置きながら、国民経済計算における貯蓄と投資の推移を見よう。

 まず、家計部門を見よう(注1)

 家計の貯蓄と貯蓄率は、つぎのように定義される。

  貯蓄=可処分所得+年金基金準備金の変動-消費支出

  貯蓄率=貯蓄÷(可処分所得+年金基金準備金の変動)

 ここで、「年金基金」というのは、企業が年金・退職一時金給付のために積み立てた基金のことである。厚生年金基金、適格退職年金等も含まれる。

 ここから家計に支払われる年金・一時金が「年金基金による社会給付」である。ネットの給付が、家計の所得支出勘定において、「年金基金準備金の変動」として計上されている。

 なお、厚生年金、国民年金、労働保険、共済組合、健康保険組合などが「社会保障基金」であり、ここからの給付が「社会保障給付」である。この受け取りは、「可処分所得」の中に含まれている。つまり、可処分所得は、賃金、利子などの財産所得、個人企業の営業利益から利子支払いを引いたもの(これを「第1次所得バランス」という)に社会保障給付を加え、そこから税や社会保険料を引いたものとして定義されているわけだ。

 このように、国民経済計算では、企業年金や退職金などを可処分所得には含めないが、貯蓄や貯蓄率の計算では可処分所得と同じようなものとして扱っているのである。

(注1)国民経済計算では、「調整可処分所得」という概念が使われている。これは、可処分所得に社会保障の現物給付などを含めたものである。調整可処分所得を分母にした貯蓄率を「調整家計貯蓄率」と呼んでいる。これは、調整前の貯蓄率より低い値になる(1997年度では調整前が11.4%で調整後が9.8%、2007年度では調整前が2.2%で調整後が1.8%)。以下に述べるのは、調整前の可処分所得と貯蓄率である。

家計貯蓄は大幅に減少

 家計部門の貯蓄は、この期間に大きく減少した。97年度には35.7兆円であったものが、07年度には6.3兆円と、約6分の1程度にまで減少したのである。額では29.4兆円の減少だ。この結果、貯蓄率が大きく下落したのである。

 なぜ貯蓄はこのように大きく減少したのだろうか?

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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現在、人口減少が避けられない状況にある日本。人口構造の大きな変化は、経済パフォーマンスやさまざまな問題と深く関連しているが、政策などに十分に考慮されていないのが現状だ。本連載ではそうした状況に疑問を呈すべく、人口減少と経済問題などとの関連性を深く分析していく。

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