3年ぶりに黒字化の兆しが見え始めた日本マクドナルドホールディングス。「ポケモンGO」効果にも沸くその裏で、現場スタッフの表情はさえない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)
2年にわたり不振にあえいできた日本マクドナルドホールディングスの株価が7月22日、暴騰した。スマートフォンゲーム「ポケモンGO」による経済効果「ポケノミクス」のおかげである。
マクドナルドはこの日、日本でのサービス開始前から国内人気も必至とされていたポケモンGOについて、米ナイアンティック、ポケモンとの提携を発表した。全国のマクドナルド2900店舗が、ゲームユーザー同士でバトルができる「ジム」やアイテムを入手できる「ポケストップ」の場となったため、来店客数の増加につながるだろうと市場は好感した。
しかし、である。ポケモンGOによる特需があっても、店舗で接客する店長らの顔は浮かない。
なぜなのか。その理由を明かすために、業績を見ていこう。
マクドナルドは2014年7月に鶏肉の賞味期限切れ問題、15年1月にはチキンナゲットへの異物混入問題がそれぞれ発生し、それらの影響も大きく、2期連続で赤字に陥った。
14年12月期は80億円、15年12月期に至っては259億円の経常赤字を計上。200億円以上を借り入れて赤字を補填するような状況だ(図(1))。
長引く低迷を受けて、親会社の米マクドナルドが一時、商社やビールメーカーなどに日本事業の売却話まで持ち掛けるほどだった。
財務の安全性を測る指標である自己資本比率は非常に高水準を誇ってきたが、それも13年に80.5%あったものが、15年は60.8%まで低下した(図(2))。
さて8月9日、16年12月期第2四半期(4~6月)の決算発表会の場に姿を現したサラ・カサノバ社長は、自信がみなぎる表情で「マクドナルドはようやく回復基調に乗ってきた」と語った。
事実、この四半期の業績は復調している。経常利益こそ約2億円の赤字だが、当期純利益は約2億円の黒字に転換した。通期予想は経常利益22億円、当期純利益10億円。3年ぶりの黒字化を射程圏内に捉えている(図(1)(3))。