「一流」とされるビジネスリーダーたちは、どんな家庭教育を受けてきたのか?育児でもビジネスの現場でも共通する「本質的なリーダーシップの育て方」とはどのようなものか?そのような疑問から、多様な事例の調査に基づき、育児にもビジネスリーダーの育成にも共通する「本質的なリーダーシップ教育のあり方」を論じた『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』。半年で17万部を突破し、各国言語にも続々翻訳。音声で聞けるオーディオブックとしても発刊されている異例のベストセラーとなっている。
今回、著者の一人であるムーギー・キムさんと対談するのは、小泉政権では大臣として不良債権処理や郵政改革に当たった竹中平蔵さん。
後編では、リーダー教育や「地頭」の概念、そして昨今の世界情勢まで語っていただきました。竹中さんが仕えた小泉純一郎さんは、どんなリーダー教育をほどこしたのか?「頭がいい」とは何か?世界はどこに向かうのか?刺激的な対談が続きます。(構成:田中裕子、写真:柳原美咲)

小泉進次郎に小泉純一郎元総理は何と声をかけたか?「人を育てる」2つの方法

小泉進次郎に送った、小泉純一郎元総理のひと言

ムーギー『一流の育て方』は「リーダーはどのように育てられてきたか」をまとめた本とも言えますが、「リーダーの育て方」と言えば、竹中先生は小泉純一郎元総理の次男である小泉進次郎さんを高く評価されていますよね。

竹中 そうですね。政治家として広い見識を持っていると思いますよ。

小泉進次郎に小泉純一郎元総理は何と声をかけたか?「人を育てる」2つの方法竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授。博士(経済学)。1951年、和歌山県和歌山市生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。1981年、ハーバード大学、ペンシルバニア大学客員研究員。1982年、大蔵省財政金融研究室主任研究官。1987年、大阪大学経済学部助教授。1989年、ハーバード大学客員准教授、国際経済研究所客員フェロー。1990年、慶應義塾大学総合政策学部助教授。1998年、「経済戦略会議」(小渕首相諮問会議)メンバー。2001年、経済財政政策担当大臣。2002年、金融担当大臣・経済財政政策担当大臣。2004年、参議院議員当選。経済財政政策・郵政民営化担当大臣。2005年、総務大臣・郵政民営化担当大臣。2006年、慶應義塾大学教授グローバルセキュリティ研究所所長。アカデミーヒルズ理事長。2009年、(株)パソナグループ取締役会長、2010年、慶應義塾大学総合政策学部教授。2013年、産業競争力会議メンバー。2014年、国家戦略特別区域諮問会議メンバー。2015年、オリックス(株)社外取締役。2016年、SBIホールディングス(株)社外取締役。近著に『日本経済2020年という大チャンス!』(アスコム)、『日本経済のシナリオ』(KADOKAWA)、『世界で突き抜ける』(共著、ダイヤモンド社)がある。

ムーギー それは、小泉元総理のアドバイスもあるのでしょうか?

竹中 2009年、はじめて進次郎さんが衆議院議員選挙に出馬したときに「なにかアドバイスされたんですか?」と小泉元総理に聞いたら、「していない」とおっしゃいました。ただ、ひとつだけ伝えたのが、「自分が『やる』と言ったことは覚えておけ」だそうです。

ムーギー へえ、そうなんですか!『一流の育て方』でとったアンケートでも、「親からは強制的になにかやれとは言われなかったが、自分で決めることを求められた」といった回答が多かったんですよ。自分で決めることが意思決定のトレーニングにもなり、同時にモチベーションの源泉にもなるようですが、これも非常に多くのリーダーの事例で共通していますね。

竹中 自分がやると決めたことは、絶対に成功させたいですからね。

ムーギー それにしても、小泉進次郎さんのようなリーダーを育てるには、いったいどうすればいいのでしょうね?

竹中 そのヒントになるような問題が、数年前に慶應大学SFCの入試で出題されました。

 小論文の問題で、いくつか提示された資料のなかに「宮大工の徒弟制のような非段階的な学習」と「サイエンスを使ったアスリートやピアニストの評価方法」に関する文章が含まれていたんですね。

 キムさんは、見よう見まねの徒弟制度と科学技術を用いたサイエンス、人を育てるときにどちらの方法がいいと思いますか?

ムーギー うーん、両方大事ですよね?

竹中 そのとおり。それぞれに長所があるので、両方を取り入れる必要があります。その点、進次郎さんはコロンビア大学に留学して政治の理論もわかっているし、お父さんの背中を見て学んだところもあるでしょう。だから、「いいリーダー」になる条件が揃っていると言えるかもしれませんね。

ムーギー なるほど、そう言えるのかもしれませんね。