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日本を元気にする経営学教室

製販部門連携の本当の意味とは
改善が生み出す効果を正しく求める
慶應義塾大学ビジネス・スクール校長 河野 宏和

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第24回】 2010年11月22日
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 経済性工学は、前回述べたように、将来に向けた意思決定を助けるための考え方であり、改善活動の効果を正しく評価するためにも必要不可欠である。

 例えば、工程での設備段取り時間を短縮した場合、多くの企業で、「短縮時間×その時間分の賃率」が改善効果として計算される。段取り時間を30分短くし、オペレーター1名の賃率が1時間当たり2000円とすると、「2000円×0.5時間=1000円」が1日の効果、月に20日稼働として2万円のコスト削減効果とされる。

 また、不良品を減らす工程改善効果は、「単価×減った不良品の数」で計算されることが多い。この場合、1日に10%、1000個発生していた不良品が半分になるように改善すると、「材料費100円×500個=5万円」が1日あたりの改善効果とされる。月20日稼働として100万円の効果である。しかし、果たしてこれらの計算は正しいのだろうか?

重要な手余りと手不足の区別

 一般に段取り時間を短くすると、従来は段取りのために製品を生産できなかった時間が、生産可能時間に変化する。そうすると、製品の供給能力が向上することになる。ここで、需要と供給のバランスという問題が発生する。もし、供給能力(手)が充分で、需要を上回っている「手余り」の状態であれば、生産能力の増加は、生産数量の増加ではなく、生産に必要な時間を短縮し、残業や休日出勤を減らすだけである。

 一方、もし需要が生産能力を上回っている「手不足」の状態であれば、段取り時間の短縮によって生産可能数量が増え、それは直ちに販売可能数量の増加に結びつく。その分材料費などの変動費も必要になるが、それ以上に多くの売り上げ収入が得られ、粗利益(売上収入-変動費支出)の総額が増えることになる。したがって、手不足の下での改善は大きな効果を生み出す。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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