韓国最大手の海運会社、韓進海運が経営破綻したことで、日本の海運関係者は慌てふためいている。韓進の船が寄港できず海上で足止めを食っているほか、日本勢が参画する来春からの新アライアンスの勢力が後退してしまう可能性が出てきたからだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)
9月初旬、川崎汽船の営業担当者は、荷主に対して、遅延している荷物の状況を説明するため駆けずり回っていた。コンテナ船の貨物の中身は、衣類や家具から家畜の飼料まで多岐にわたるが、海の上に停泊したままだからだ。
これは、韓国海運最大手の韓進海運が経営破綻したことに起因する。8月31日、韓進は日本でいう会社更生法適用に相当する法定管理を申請し、事実上倒産した。
目下、海運市況は大不況の真っただ中。特にコンテナ船市況は厳しく、供給過剰感から運賃が採算を下回る状況が続く。こうした市況にあって、持ちこたえることができなかったのだ。
川崎汽船と韓進は、同じ海運アライアンスに所属しており、川崎汽船が輸送契約している荷物の一部は、韓進の船が輸送している。海上で停泊しているのは、この荷物を積んだ船だった。
というのも、韓進が倒産し、世界各国の港が韓進船の入港を拒否しているからだ。船舶が寄港するには、使用料や荷役作業などのポートチャージが掛かる。大型船では600万~700万円にも及ぶが、もはや韓進にその支払い能力はないとみられているためだ。
韓進側にも簡単には寄港できない理由がある。いったん寄港すれば、債権者に船舶や燃料油などの資産が差し押さえられ、事業を継続できなくなる可能性が高い。そのため韓進は、各国の裁判所に差し押さえ禁止命令を申請している。
こうした事情から、韓進の船舶約140隻のうち半分が海上に浮いたまま。アライアンスパートナーである川崎汽船などが割を食っており、荷主に対する謝罪と状況説明に追われているというわけだ。
また、川崎汽船ほどではないが、日本郵船や商船三井も、韓進との個別の提携に伴って影響を受けている。それぞれ、荷主への説明など対応に当たっている。
さらに深刻なのが、船のオーナーである。日本の船主のうち数社が韓進に用船(リース)しており、韓進からの早期解約を見越して、すでに売船先を探しているとささやかれている。