大手自動車、IT企業が
レトロフィット・ベンチャーに殺到

写真のような純粋な自動運転車でなく、既存の自動車を自動運転化できれば爆発的に普及しそうだ。画像出所:グーグル https://googleblog.blogspot.jp/2014/05/just-press-go-designing-self-driving.html

 今春にGMに買収されたクルーズ・オートメーション(Cruise Automation)、8月にウーバーに買収されたオットー(Otto)、スタンフォード大学のAI研究者らによって創設され、今春1200万ドルの創業資金を調達したドライブ・エーアイ(drive.ai)。

 これらスタートアップに共通するのが、自律走行機能を後付けする技術開発だ。ハードウェア、ソフトウェアのキットを普通の車に搭載するだけで、通常の自動車をレトロフィットして自走運転を可能にする。

 そんなことができるのかと驚くばかりだが、これら企業への期待は大きい。グーグルやテスラなどが自走車開発にしのぎを削っている脇で、レトロフィットの自走キットがやおら注目を集めている。

 そうした企業の走りとも言えるクルーズ・オートメーションは、2013年にシリコンバレーで創業され、主に個人投資家を中心に190万ドル近い資金を調達していた。創業者は連続起業家で、アマゾンやアドビに会社を売却した経歴を持つ。

 同社は当初、1万ドルでキットを発売するとしていた。当時公開された写真では、車のてっぺんにセンサーなどが統合されたスマートなハードウェアが載っていた。同社は、その後ソフトウェアに開発を転換。そして今春GMに買収された。創業後たった3年のことだ。

物流の世界を変える
トラックの自動運転化

 3年どころか、創業後数ヵ月で買収されたのは、オットーである。同社は、2016年1月に創業され、従業員が100人足らずになった7月にウーバーに買収された。

 同社はトラックの自走技術を開発していたが、これは、ますます注目されるロジスティクス業界で物品のトラック輸送を効率的、かつ安全に行うのに貢献するものだ。トラックは自走できるだけではなく、先頭車にならって後続車が連隊を組んで無人で走行することも可能で、こうした技術を専門に開発している会社も別にある。

 オットーは自社製のレーザー・システムも開発しており、ウーバーは、オットーの技術を自走タクシーに投入するだけではなく、自走トラック事業の構想も持っているのではないかと見られている。

 ただし、ウーバーは自社で製造せず、他の自動車メーカーと提携する計画だ。手始めにボルボと組んで、すでに8月中にピッツバーグでそうした自走タクシーを実用化しているとされる。当初は運転手も同乗しているというが、はっきりしたことは不明だ。

 ウーバーには、グーグルの親会社アルファベットの投資部門、グーグル・ベンチャーズが資金を投入しているほか、トヨタも投資を行っている。ウーバーの自走タクシー事業が今後どう展開するのかは興味深く、オットーの技術がそこでどう利用されるのかにも注目が集まる。