工業高校と連携して
実践的な人財を育成

 日本の近代化を技術力で支えた佐賀藩は、徹底した藩政改革や教育に力を入れた10代藩主・鍋島直正や、早稲田大学の創始者で2度の内閣総理大臣を務めた大隈重信、初代司法卿の江藤新平など「佐賀の七賢人」と呼ばれる偉人を輩出。人財の面でも近代日本の礎を築いた。

 佐賀県では、こうしたものづくり、人づくりで世界をリードしていた佐賀を「再興」し、若者がものづくりに自信と誇りを持ち、技術者が評価される社会を作っていく取り組みが進む。事業の中核にあるのは、15年度に設置した『佐賀県ものづくり人財創造基金(10億円)』だ。これを活用した「ものづくり」イベントや人財育成など多面的な事業が展開されており、「今後は、県内の工業高校と連携し、現場で実践的に活躍できる人財を育て上げていきたい」と山口知事は抱負を語る。

 また、進学や就職で県外に出ていった若者たちに佐賀の魅力を再認識してもらい、Uターン就職や移住を促す「Re:サガミーティング」を東京・大阪など全国6会場で開催。人財面での誘致策も進めている。

 他にも佐賀県には、(1)自然災害が少ない、(2)福岡にJRで約35分と近接しながら地価・賃料が安い、(3)九州のクロスポイントに位置し、アジアに開かれた重要港湾(伊万里港・唐津港)や九州佐賀国際空港を擁する、(4)自然豊かで暮らしやすい環境――など、進出企業にとってさまざまメリットがある。

 こうした、地域資源と人的魅力とを兼ね備えた佐賀県。企業にとっては、 間違いなく“頼りになる立地先”に違いない。

「人づくり」への取り組み
このぶれない信念が魅力

東レ経営研究所
産業経済調査部門長
増田貴司
チーフエコノミスト

地方創生を成功させるには、それを支える「人づくり」が不可欠です。しかし、これまで国の政策は、「人は外から連れてくる」というような話ばかりで、地方経済を支える人財の育成・確保という視点が後回しにされてきた感が否めません。その点、佐賀県は「ものづくりを支える人づくり」という明確なビジョンを早くから打ち出し、それを具現化するため「佐賀県ものづくり人財創造基金」を創設するなど、ぶれることなく「人づくり」に取り組んでいる点が、進出企業にとっての大きな魅力なのではないかと思います。また、電子黒板の普及率が全国で1位※という佐賀県はICT教育が進んでおり、県民が幼少期からICTに慣れ親しんでいるということは、迫り来るデジタル化と第4次産業革命の波に、十分に対応して活躍できる人財を輩出できる土壌が整っているといえましょう。
※出典:文部科学省「電子黒板のある学校の割合」(2015年3月1日現在)