2010年5月のギリシャに続き、11月21日、アイルランドがIMF(国際通貨基金)とEU(欧州連合)に金融支援を要請した。EUが10年5月に創設した延べ7500億ユーロの金融支援の枠組みは時限付き措置であり、ポルトガルやスペインへの飛び火の可能性もあるが、現在のユーロ圏諸国の債務不履行懸念はやや過剰である。
2010年において、ユーロ圏諸国の財政危機が世界の金融市場の一大テーマとなった。筆者は、ユーロ圏で国債の償還能力に疑問が呈されている国には、二つのタイプがあると考えている。
第1に、過去の政府の財政運営に問題があり、名目GDPに対する一般政府債務残高の比率が高水準であり、今後も景気低迷が続き、政府の財政赤字削減能力が欠如するために債務残高が増加の一途をたどると見なされた国である。代表格がギリシャであり、ポルトガルも同様の理由で懸念されている。
第2に、銀行の不良債権問題が深刻化し、政府の銀行救済コストがふくらみ、政府債務残高の増加に歯止めがかからないとの懸念を抱かれた国である。典型がスペインやアイルランドである。
もっとも、ユーロ圏諸国は、いったんは市場の懸念をある程度後退させることに成功した。ギリシャは5月に延べ1100億ユーロの金融支援枠をIMFおよびユーロ圏から獲得した。11年末までに満期を迎える国債は金融支援を通じ償還されることが担保されたため、目先の債務不履行懸念は後退した。スペイン、アイルランドについては、それぞれ、7月の欧州銀行監督者委員会(CEBS)によるストレステスト、9月のアイルランド中央銀行のストレステストを通じ、厳しい景気情勢の下でも政府による銀行への追加公的資本注入額は限られるとした。
しかし、11月に入り再び、ユーロ圏諸国の国債償還能力に対する懸念が急速に高まり、特にアイルランドは金融支援を仰がざるをえない状況に追い込まれた。その一因として10月29日のEU首脳会議の声明文がある。
EU首脳会議の声明文が
危機再燃の一因に
ユーロ圏が10年5月に創設した延べ7500億ユーロの金融支援の枠組みのうち、規模の面で中核を成す欧州金融安定ファシリティ(EFSF)は、原則13年6月末をもって機能を終息させる。