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小野田弘士氏
早稲田大学環境総合研究センター准教授
早稲田環境研究所代表取締役

 しかし、現在実際に産業界で使われている化学物質のうち、環境に優しい物質は1割程度しかないと博士は危惧している。「たとえ太陽光発電であっても、パネルの材料に有害物質が使われていたら、それは環境に優しいエネルギーとはいえません。循環型社会を実現するのがサステナブルテクノロジーですが、さらにその土台になる基礎技術がグリーンケミストリーです」

 ワーナー博士は最後に、「循環型社会の構築が求められる現在こそ、化学者の存在価値はますます高まっています。学生たちがグリーンケミストリーを学び、多くの化学者がそれを実践し、そこで得た知見を自在に活用できる知識ベースを構築することが、地球を救える道であると信じています」と結んだ。

技術をオープンに結び付けイノベーションを起こす

 その後、複数の会場に分かれ2日間にわたるセッションが開催された。セミナーの掉尾を飾ったパネルディスカッションでは、モデレータの早稲田大学環境総合研究センター、小野田弘士准教授が、多岐にわたった論点を振り返りつつ、各パネリストや会場との議論を通じて「地球規模の環境問題に対しリーダーシップを取れる人材の育成が急務」とまとめた。さらに、大学や官公庁といった縦割りの組織にはない視点から最先端の研究者と技術をオープンに結び付けイノベーションの触媒となっているインテレクチュアル・ベンチャーズのようなプレーヤーに期待を寄せた。

 今回のセミナーでは、各分野のサステナブルテクノロジーの進歩に熱い視線が注がれた。それらのテクノロジーを社会経済のシステムと接合させ、イノベーションへと促進させることが、循環型社会形成への鍵を握っていることは間違いない。

 

パネルディスカッションでは、知的財産によるイノベーションと市場化について、それぞれの実体験を基に具体的な議論が交わされた(登壇者、左から早稲田大学・小野田氏、早稲田大学・胡浩氏、TechnoProducer・楠浦崇央氏、NTTデータ経営研究所・村岡元司氏、早稲田大学・清水康氏、ドリームインキュベータ・岩本隆氏)。