客観性から納得性へ
人事評価の力点が変わる

 そうした人事評価制度を構築していく上で重要になるのが、客観性に加えて、本人の納得性である。

「評価内容が納得性に影響を与えることは確かですが、それ以上に納得性を左右するのがコミュニケーションです。数カ月に一度、上司が部下と面談して、本人の働きぶりについて現状や課題の認識を伝え、きちんと話し合っていれば納得性は高まるでしょう。それは人事部ではなく、各部門の上司の仕事です」と高橋氏は話す。

 個に対する支援の強化は、人事部だけの力では限界がある。そこで、大きな役割を担うのが上司である。人事部と各部門上司の役割分担、上司に求められるマネジメント能力について、企業は改めて検討する必要がありそうだ。

 今、多くの企業が人事改革に取り組んでいる。グローバル化を進める企業、従来型のビジネスモデルを変えようとしている企業などでは、経営者の人事への関心も高まっている。

 ただ、何から手を付ければいいのかと迷っている企業も少なくない。そこに、日本企業の課題があると高橋氏は指摘する。

「多くの日本企業は従来、人事に専門性が必要だとは考えていませんでした。結果として、人事のプロが育っていません。ビジネスと人事の両方に精通し、経営に対して戦略的な提言ができる人事のプロをいかに育成するか。それは喫緊の課題です」

 最近は、人事ビッグデータという言葉も関心を集めている。確かに、データの可能性は大きい。ただ、そこから成果を生み出すための方法を考えるのは経営者や人事部の役割だろう。それは、社員の成長を促すとともに、自社の業績向上につながるものでなければならない。企業における人事部の戦略的な役割は、今後さらに大きなものになっていくはずだ。