太陽光発電や風力発電などの新エネルギーをめぐり、国内と海外の企業による“場所取り合戦”が世界各地で勃発している。

 東京電力と豊田通商の合弁会社ユーラスエナジーが9月、米国で世界最大級の発電容量となる4.5万キロワットの太陽光発電所の建設を開始。また同月に日揮が、今月には三井物産がスペインの太陽熱発電事業に合弁会社設立や地元企業に出資するかたちで参入を決めた。一方、外国企業も近年、スペインなどで大規模太陽光発電所の設置を次々と進めている。大手商社関係者は「発電量を決めるのは“立地”。発電所の建設場所で発電効率が決定的に違う。太陽光も風力も一等地はすでに“品薄”で競争が激しくなった」と明かす。

 一等地とは、太陽光では「サンベルト」と呼ばれる南欧やオーストラリア、サハラ砂漠など、風力では北欧や北米の一部だ。

 太陽光の一等地、南欧の年間有効日照時間は日本の約2倍で、売電収入も比例する。風況頼みの風力も北欧では倍の収益だ。加えて、再生可能電力を既存電力の数倍で買い取るフィード・イン・タリフ制度が整い、人口密集地も近い三拍子揃う場所は多くない。

 だが、現在の利益幅は制度が整う国でさえ「なんとか食べていける程度」。にもかかわらず、用地の争奪戦が激しさを増す理由は、近い将来、簡単に採掘できる油田(イージーオイル)や炭鉱が枯渇し、再生可能電力の競争力、収益性が高まると見られているからだ。風力発電市場は20年後、7倍程度に拡大するという。「そのときに土地を買おうとしても時すでに遅し」なのだ。

 だが、日本勢の出遅れが目立つ。たとえば風力発電で日本最大手のユーラスエナジーが計1.8ギガワット(昨年)の発電容量なのに対し、スペインのイベルドローラは一等地を中心にすでに10ギガワットを有し、さらに拡大中だ。

 商社関係者は「外資同様、ディベロッパーを目指す計画だが、現在は事業参画でノウハウを学ぶ段階だ」と話す。日本企業が“青田買い”競争に勝てるのか。アフリカなどの希少資源では中国の後塵を拝したが、同じ轍を踏むべきではない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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