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日銀は「目覚めた」が、主役を務める局面は終わった

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第447回】 2016年9月27日
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「量」重視の政策から
「金利」重視の策に軸を移した

 9月20、21日に開催された金融政策決定会合で日銀は、これまでの“お金の量”を重視する政策から、金利(イールドカーブ)を重視した政策に軸を移した。それが“長短金利操作付き量的・質的金融緩和”の導入だ。

 今回の日銀の決定は、ある意味では画期的といってよいだろう。これまで、「お金の量を増やしさえすれば、物価は上昇し経済は回復する」としてきた、金融政策の基本的な考え方を大きく変えたからだ。

 日銀の積極的な量的緩和策にもかかわらず、わが国経済の状況が期待したほど回復していない状況を見て、ようやく日銀も目を覚まし、政策転換をせざるを得なくなったのだろう。それは歓迎すべき転換だ。

 また、今回日銀はサプライズ重視の「短期決戦型」から、金融機関への配慮など市場とのコミュニケーションを通した「長期視点の金融政策」に転換したともいえる。

 日銀はマイナス金利を続けつつ、当面は長期金利がゼロ%近傍に推移するよう国債を買い入れる。これは市場動向に応じて買い入れが柔軟化されることを意味する。それは、一定の資金量を提供するこれまでの政策の大転換と見るべきだ。

 一方、日銀は“オーバーシュート型コミットメント”を導入し、安定した物価上昇が確認されるまで金融緩和を続けると表明した。これはマネタリーベースの増加を目安として示し、金融政策に対する信認・期待のつなぎ留めを目指している。ただ、注意が必要な点は、政策の柔軟化は国債買い入れ額の減額につながる可能性があることだ。

 決定会合後、銀行株を中心に国内の株式市場は急反発した。それは、日銀の強いコミットメントと長短金利の操作を通した金融機関への配慮を好感した結果だろう。しかし、冷静に考えると金融機関を取り巻く状況は依然として厳しい。政策の手詰まり感もあり、為替レートへの影響も限定的だろう。

 今回の日銀の決定で最も明確になったことは、もう日銀のできることは限られているということだ。経済の実力=潜在成長率を引き上げない限り、わが国経済の本当の意味での回復は難しい。日銀がいくら頑張っても、潜在成長率の上昇に寄与できる部分は限られている。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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