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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

北東アジアに再び冷戦構造が……と主要米紙

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第27回】 2010年12月8日
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英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週も日本を含むアジア情勢についてです。北朝鮮をめぐりアメリカが大統領や国務長官、そして軍のトップと多方面から中国に圧力をかけています。それは「米・日・韓vs中国・北朝鮮」という新たな冷戦構造のさきがけではないかと、複数の米主要紙が書いているほどの攻勢です。「ブロック」などという、冷戦終結後はニュース記事であまり見かけなくなっていた言葉も登場し、時代が何十年も逆戻りしたような感覚を覚えています。(gooニュース 加藤祐子)

活発化するアメリカのアジア外交

 北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃をめぐり、ワシントンでは6日、日米韓の外相会談が開かれました。これについてはたとえば米CNNが「今後攻撃あれば『重大な結果』と北朝鮮に警告(North Korea warned of 'severe consequences' for further attacks)」という見出しで報道。日本メディアももちろん詳報していますが、このCNN記事によるとクリントン長官は会談後の共同記者会見で、「韓国の人々に、私たちは皆さんと肩を並べていると知ってもらいたい。皆さんの防衛に、私たちは深くコミットしている」と述べたとのことです。

 さらに同記事によると同日、米統合参謀本部のマレン議長が急きょ訪韓し、米韓の結束を強め、「決意の程を示す」(議長の報道官)ことになったと(マレン議長とはこちらでご紹介したように、金正日総書記について「予測不能だという一点だけが予測可能だ(predictable only in his unpredictability)」と発言した人です)。記事は、オバマ米大統領が4日に米韓の自由貿易協定(FTA)合意を発表したことにも触れ、「韓国・アメリカ・日本は公的な協力関係を促進させ、共産主義国家(訳注・北朝鮮のこと)をさらに孤立させている」とも説明しています。

 オバマ政権は中国への働きかけも加速させており、米東部時間の5日夜(北京では6日)にはオバマ大統領が中国の胡錦濤主席と電話会談。米『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、アメリカが中国に電話会談開催を働きかけてから実現するまで異例の13日もかかり、中国の意図について様々な憶測が飛び交ったとのこと。実施されてみれば30分に及んだ会談の内容について同紙の別記事は、「政府高官によると」として内容を紹介(実名報道が大原則のアメリカの新聞で匿名というのは、デリケートな話題だという証です)。いわく、オバマ大統領は胡主席に「北朝鮮の振る舞いを中国が公に非難しないせいで、野放図な隣国(unruly neighbor)を中国は勢いづかせていることになると警告した」のだそうです。

 この高官によるとオバマ氏は胡氏に、「自分たちの行動には影響が伴うのだと、対中関係も含めて影響があるのだと理解するのが、北朝鮮にとって重要だ」と発言。今年6月の米中首脳会談でも、中国が北朝鮮の軍事挑発を見てみない振り(turning a blind eye) をしていると批判しましたよね――と再び指摘したとのこと(「批判しましたよね」とは言っていないと思いますが、要するに「6月の時点で注意したのに、やっぱりこうなったじゃないですか」的な意味のことを伝えたようです)。

 対して胡主席はオバマ氏に何かを具体的に約束したわけではないが、黄海での米韓合同軍事演習に抗議することもなく、「過去のことに後ろ指を指すというよりは前向きな会話をするのが目的だった」(米政府高官)とのこと。

 そして記事は、この電話による米中首脳会談は、前述したマレン統合参謀本部議長の訪韓、そして米日韓外相会談とタイミングを合わせ、互いに補完しあうように行われたものだと書いています。同時に日米は日米で、共同統合演習「Keen Sword」を行っているわけで、アメリカが外交と軍事で多方面から一気に圧力をかけている様子が伺えます。

 さらに記事は、米日韓3国が「連帯を示したことで、中国の孤立を強調した」とも。「中国は最近、日本と韓国の両方と衝突したし、アメリカとの関係は北朝鮮や貿易、通貨、気候変動などをめぐり冷たいものとなっている」のだから、と。それだけに3カ国外相会談の後にクリントン長官は「北朝鮮が真面目な態度を示すよう、中国が私たちと協力して、明確で間違いようのないシグナルを発することを期待する」と、中国に協力を求めたのだが、中国の方は「強い姿勢をとると金政権は崩壊するか、あるいはさらに激しい暴発を引き起こす挑発となってしまう」と恐れているとのこと。

その向こうに透けて見える新たな冷戦構造

 以前のコラムでもご紹介したブッシュ政権当時の対朝交渉担当者ビクター・チャ氏はこうした事態について『ニューヨーク・タイムズ』に対して、「アジアに新しい冷戦が起きているかのようだ」と発言。米政府による相次ぐ働きかけは中国に「こちら側に立つか、北朝鮮と一緒に立つか、二つに一つだと選択を迫っているかのようだ」とも。

 現にオバマ政権の安全保障担当者たちが11月30日に会合して以降、米政府関係者たちは口々に「アメリカは北朝鮮付近で軍事演習を増やす」と言い始め、中国に対して北朝鮮を説得するよう強く促すようになり、そして日韓との外相会談を開いた。つまりオバマ政権は中国に、北朝鮮をなんとかしなければ半島周辺のアメリカのプレゼンスは高まるばかりだし、アメリカは日韓との関係を強化するぞと明に暗にはっきり伝えているのだというのです。

 同紙の別記事では、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家ボニー・グレイザー氏が、複数の課題をめぐり米中の関係冷却化が進んでいると指摘。「今から2年は、あるいはもっと長いこと、かなりよそよそしい関係(fairly cold relationship)が続くと思う」と話しています。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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