NMNの「認知度」が高まった理由とは
「あの大正製薬がNMN製品を本気で売り出すらしい」――。大衆薬や健康食品を取り扱う業界内でちょっとした話題となった。なぜ、話題となったのか。大衆薬大手として知られる大正製薬が本気で取り組むこと。それは「世間でのNMNの認知度」が一気に広がっていることを象徴しているからだ。
では、そもそもNMNとは何か、なぜ、認知度が高まっているのか――。
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、ナイアシン(ビタミンB3)から作られる成分で、体内でNAD+に変換されることが知られている。
日本では2015年にNHKのドキュメンタリー番組で、紹介されたことをきっかけに認知が広まった。
健康食品やサプリメントとして広がった背景
認知度向上をきっかけに、NMNを使ったサプリメントの開発・販売は、世界中で進められてブームになっていった。日本でも、2020年以降、拡大し、多くの関連商品が販売されている。現在、多岐にわたる企業がNMNサプリメント市場に参入しており、活況を呈している。
同社の商品開発部担当者は「NMNの原末の製造方法には、化学的に合成する方法、酵母に作らせる方法がありますが、いまだ大量生産できる方法は限られており、コストもかかります」と説明。加えて「製品の魅力を高めることはもとより、安全性や利便性の面からも、商品開発には気を遣いました」と背景を語る。
同社マーケティング部門の通信販売事業推進部通販グループ担当者は「製品価格がどうしても高額になるため、生活者への訴求力を高める販売方法やマーケティング方法を検討する必要があった」と解説する。
まさに、大正製薬としては、満を持しての発売だった。
大正製薬の「こだわり」とは
大正製薬が「NMN taisho」を発売したのは、2023年3月。同年5月以降、マーケティング活動にも力を入れて、販売に本腰を入れている。
ここでの販売戦略上、大きな課題が「他社製品との差別化」である。前述した通り、すでに市場には多くの製品が乱立している。価格は総じて数万円以上と高額だが、中には安価の製品もある。
大正製薬としての「強み」は何か――。
商品開発とマーケティングの現場では、改めてそんな議論が熱く交わされたという。そこで、打ち出された「訴求ポイント」は、やはり、大正製薬として「創業110年以上の歴史」を持つ実績と信頼性である。
大正製薬は、多くの有力ブランドを持ち、業界でも屈指の実績を誇る。
最優先で担保して、訴求すべきは「大正製薬品質」である。NMN原料は純度99%のものを使用、食品GMP認定の国内工場で製造し、大正製薬独自の厳しい品質基準に基づいて管理している。
販売方法については、大正製薬は伝統的に薬局・薬店ルートでの営業力が高いが、あえて自社サイトでの直販方式(通信販売)を採用した。
「商品の良さをご理解いただくために、他のサプリメントよりも高額で、かつ成分の認知度を考えると、この商品は特に説明が必要だと考えました。そのため、自社のプラットフォームを活用することにしました」と、マーケティング担当者は説明する。
製品形態については、瓶売りではなく、1日(1回)目安分3粒のハードカプセルを1袋ずつ小分けにした個包装を採用し、30袋(90粒)で1カ月分とした。「生活上での衛生面を考慮した他、『どこでも飲める』という利便性を重視しました」(商品開発担当者)。
むろん、製品として「新規性」を付加するというこだわりも見せる。主成分NMNの他、NMNの働きをサポートするトランスレスベラトロール、ザクロエキスを配合。これら独自の配合については、特許も取得している。
価格は、2万9800円(税抜き)。決して安くはないが、「競合製品と比較すると高過ぎない」という納得感のある価格設定を意識したという。
主なターゲット層は、高額商品ということもあり、健康や美容への関心が強く、自分への投資を積極的に行う40~50代以上の人々。「特に経営者層や企業幹部など、企業経営の最前線で活躍するビジネスパーソンからの関心が高い」という。
NMNに興味はあるが、「世にあまたある関連製品のうちからどれを選んでいいか分からない」という場合に、知名度の高い企業で品質管理がしっかり担保されている点は、大きな「決め手」になるのは間違いないだろう。
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