今年4月、日本の自治体の長として初めて育児休業を取得し、話題となった成澤廣修・文京区長。これをきっかけに、地方自治体の首長が次々に育休を取得し始めた。「育児に参加したくてもままならない」と悩む男性が増えるなか、このムーブメントは、男性が育休をとる意義を問いかけるきっかけとなった。成澤区長は男性の育休取得を奨励しつつも、それだけに留まらず、育児参加の本質を理解すべきと説く。「イクメン」をもてはやすのではなく、男性の育児参加が当たり前となり、「イクジナシ」(育児なし)がいない社会を実現することが大切だという。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
――今年4月、成澤区長は日本の自治体の長として初めて育児休業を取得し、話題となった。その後8ヵ月の間に、長野県佐久市の柳田清二市長、茨城県龍ヶ崎市の中山一生市長、三重県伊勢市の鈴木健一市長、広島県の湯崎英彦知事、大阪府箕面市の倉田哲郎市長らが、次々に育休を取得した。このムーブメントは、男性が育休をとる意義を、改めて問いかけるきっかけとなった。「イクメン首長の先駆け」と呼ばれる成澤区長が育休をとろうと思ったきっかけは、何だったのか?
結婚9年目、44歳にしてようやく授かった子どもに精一杯の愛情を注ぎ、妻の育児サポートをしてあげたかったことが、目的だ。
一般的に、母体の保護が最も重要視されるのは、産後8週間だ。世の多くの母親は、出産前から実家に帰省したり、産後に実家の母親を呼んで手助けをしてもらったりしている。しかし、私の妻の両親は60代で亡くなっている。義理の姉や私の両親もサポートしてくれたが、一緒に住んでいるわけではないため、限界があった。私が妻をサポートすることにした。
男性職員の育休取得を促すため、
あえて「育休」という名目を選んだ
自治体の特別職である区長という仕事には、もともと勤務時間の規定がなく、育休制度も存在しない。妻の育児をサポートしたいと思えば、普通の休暇をとればそれで済んだ。
しかし私は、「男性職員の育休取得率がゼロ」という文京区の状況に、かねてより問題意識を持っていた。「男性の子育てにも育休という選択肢がある」ということを職員にアピールするため、あえて「育休」という名目で休むことを発表したという経緯がある。