中学校の社会の教科書にも、円高は日本からの輸出には不利だが、輸入には有利だと書いてあった気がする。
にもかかわらず、円高が進む度に株式市場全体がほぼ全面安の様相を呈するのはなぜか?
みずほ総合研究所エコノミストの市川雄介さんはこう答える。
「株式市場で円高が嫌気されがちなのは、上場企業において円高デメリット型の業種が多いことが一因。また、日本は貿易黒字国なので、円高に伴う輸出の差損のほうが大きくなると思われがち。だが、輸入のほうも勘案すれば、日本全体ではむしろ差益が生じる」
輸出企業にとって想定レートを超える円高は大打撃。年間を通じてその水準が続くと莫大な為替差損を被り、他国との価格競争力低下で「時間の経過とともに輸出数量にも影響を及ぼす」(市川さん)。ただ、カブ知恵の藤井英敏さんはこう語る。
「1円の円高で○△億円の利益が消えると報道されるが、アナリストの予測値にすぎず、決算が出ないと真実はわからない。企業によっては、想定レートよりも円高で為替予約している可能性も……」
(文/大西洋平)
※ダイヤモンド・ザイ2010年12月号に掲載。誌面では「円高で売られすぎた銘柄」なども掲載!