横浜市の大口病院で「内部犯行」が疑われる入院患者の死亡事故が相次いで発生した。そもそも日本の病院は海外の病院に比較すると、来訪者を管理するセキュリティチェックのみならず、病院内での「相互監視」については、甘い点が多々見られる。(多摩大学大学院教授 真野俊樹)

海外と比べると
犯罪に弱い日本の病院

日本の病院が犯罪に弱い、根本的な問題点(写真はイメージです)

 横浜市神奈川区の大口病院で、点滴に界面活性剤が混入され男性入院患者2人が死亡するという事件が起きた。現在、「連続殺人事件」として捜査が進められている。非常にショッキングな事件であり、事件当時の状況などから見て「内部犯行」が疑われている。

 筆者は医療ツーリズムなどを研究しているため、世界各国の病院を見学する機会が多い。海外の病院を見学してみて、つくづく感じるのは、日本の病院は犯罪に対しての対応が極めて弱いということだ。

 実際、警視庁のデータによれば、平成27年度に東京都内の病院では、病院、診療所等の建物に侵入し、金品を盗む「病院荒らし」が89件も発生しているのだ。

 犯罪の対象は、金品の盗難だけではない。麻薬類や劇薬指定の薬を含む医薬品の盗難、新生児の誘拐、クレーマーやモンスター患者による職員への暴行など幅広い。

 日本の医療機関は、地域の重要なインフラとして開かれた存在であり、「性善説」に基づいて患者や見舞客、職員らの管理がなされている。それは日本の医療機関の良い点であると筆者は考えるが、今後、盗難だけでなく、痛ましい事件が相次げば、病院のセキュリティ対策は抜本的に見直されることになるだろう。

病院は「安全ではない」場所
子ども誘拐もザラにある新興国の病院

 そこで、海外の病院セキュリティ事例を紹介したいと思う。これらすべてが日本の医療機関に適用できるものではないが、海外と国内の実情を比較することにより、見習うべき点はぜひ参考にすべきだと思うからだ。

 まず、病院についての安全に対する認識が日本と海外では異なる。そもそも、海外では病院は来訪者や入院している人にとって「安全な場所ではない」と考えられているのだ。