高齢化に伴って、資産の運用が重要な課題となる。労働して勤労所得を得ることよりも、それまで蓄積してきた資産を適切に運用して財産所得を得ることのほうが重要な課題になるのだ。これは、個々の家計にとっても、国全体にとっても言える。

 国全体として見た場合、対外資産の対GDP比は顕著に上昇したことを前回述べた。国富の対GDP比は、90年代以降のバブル崩壊の影響があるため、格別上昇したわけではない。しかし、家計の受取所得に対する金融資産の比率をとると、【図表1】に示すように、顕著に上昇している。

これからの高齢化社会では、<br />インフレに備えた資産運用が必要になる

 すなわち、この比率は、1980年度には1.89であったが、90年度には2.95にまで、そして2000年度には4.05まで上昇した。08年度においては4.29である。

 これは、金融資産の運用の重要性が、家計にとって重要になったことを意味している。仮に金融資産の運用利回りが不変であったとすれば、家計の受け取りに占める財産所得の比率は、80年度から08年度の間に4.29/1.89=2.27倍になったことだろう。

 しかし、現実にはそうした変化は生じなかった。【図表1】に見るように、家計の受取所得に占める財産所得の比率は、80年代には上昇し、80年度の11.2%から90年度の17.6%までになった。しかし、それ以後は低下した。08年度では7.0%であり、80年代の水準より低くなっている。

 金融資産と受取所得の比率が90年代以降も上昇したにもかかわらず財産所得の比率が90年度以降低下した理由は、第1には金融緩和政策によって家計の得る利子所得が減少したことだ。第2の理由は、株式市場が低迷を続けたことである。