2013年9月29日、再選されたメルケル独首相はベルリンのブランデンブルク門前で演説を行った。支持者たちは「ドイツを救った女」とメルケルを呼んだ。彼女がポケットから新しい100ドイツ・マルク紙幣を取り出すと、ドイツ国民は大歓声でそれに応えた。「誰もがそのメッセージを理解した。ユーロの悪夢は終わった」。
これは英「インディペンデント」紙が11月29日に掲載した近未来小説風シミュレーションである。同記事では、フィンランド、オーストリア、オランダ等もドイツに続きユーロから離脱する。一方、ユーロに残ったフランスのサルコジ大統領は12年5月の最後の記者会見で、疲れ果てたように「ドイツよ、これ以上私を虐待しないでくれ」と語った。彼は大統領選挙に出馬したストラス・カーンIMF専務理事に敗北していた。
欧州大陸の統合の動きに、英国はもともと冷ややかである。英「デイリーエクスプレス」紙は11月25日に、EUから英国は脱退しろという過激な提言を1面トップに掲載した。英「フィナンシャルタイムズ」紙も2日間にわたって、EUが域内の経済弱小国に対して、非効率な補助金を支出していることを糾弾した。そういった考え方は、ブリュッセルのEU官僚が英国の税金をムダづかいしているという不信感から生じている。