Photo : JIJI/AFP=時事
日本のエアラインにのみ課される航空機燃料税。日本航空(JAL)で年間455億円(2008年度)もの負担になっており、国際的に見ても理不尽な税だ。この税金をめぐって現在、半減を狙う国土交通省と、4分の1減で決着をつけようとする財務省のあいだで火花が散っている。
その航燃税バトルの陰で目立たないが、12月2日、企業再生支援機構とJALは「規制緩和に関する要望」と題した要望書を国土交通大臣に提出した。
要望書では、羽田空港と成田空港の発着枠数の増加とともに、伊丹空港の前時代的な発着枠規制の撤廃を求めている。
さらに、国内線の運賃規制にも言及。特に、スカイマークやエアドゥなど、JAL・全日本空輸(ANA)以外の新興エアラインへの過剰な優遇策をやめることを提言している。「役所がいやがる点を突いた」(業界関係者)と驚きの声が上がっている。
役所の裁量が大きく、さまざまな規制でエアラインが身動き取れないことで有名な日本の航空行政。これまで、こうした規制に果敢にかみついてきたのはもっぱらANAで、JALはどちらかといえば、親方日の丸体質で役所の言いなりになってきた。
ところが、経営が行き詰まり、会社更生法下で再建することが決まった今、JALは国の言いなりになって放漫経営を続けてきた過去との決別に動き出した。管財人である支援機構の目には、規制にがんじがらめになっている航空業界の現状は苦々しく映るようだ。
特に、運賃規制は、業績回復が必要なJALに重くのしかかる。
たとえば羽田~北九州線。1日当たりJALは4便、スターフライヤーは11便を運航している。12月の運賃で見ると、スターフライヤーの2万1800円に対して、JALは2万3900円。2100円の開きがある。
羽田~旭川線の場合、JAL・ANAの2万7500円に対してエアドゥは1万3700円、スカイマークは1万0900円だ。
こうした運賃規制は新興エアライン育成のための施策で、各路線の状況などによって、微妙なさじ加減で国交省が指導している。「役所が適当に指導しているようにしか見えない」(業界関係者)。
また、業績好調で航空機の大量発注を決めたスカイマークははたして新興エアラインと呼べるのか。「新興エアライン」の定義自体があいまいなまま放置されているのが現状だ。
規制だらけの航空行政に関しては、多くの有識者たちも改善すべきとの発言を繰り返してきた。JALのためというわけではなく、航空業界の健全化のために、考え直さなければならない点は数多くある。航燃税の軽減だけで片がつくわけでは決してない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)