スウェーデンでの性犯罪容疑で英当局に逮捕された内部告発サイト「ウィキリークス」代表のジュリアン・アサンジ氏が12月16日、保釈された。同氏は、スウェーデン当局の身柄引き渡し要求に抵抗している。一方、米国内では「政府に莫大な被害をもたらした彼をスパイ罪で訴追すべきだ」との声が高まり、「司法当局による立件間近」とも言われている。過去にスパイ罪で告発された被告人の弁護を務めた経験をもつワシントンの大物弁護士に、アサンジ氏の刑事訴追の可能性や言論の自由との関連などについて聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)
ワシントンの有名国際法律事務所「マクダーモット・ウィル・エメリー(MW&E)」のパートナー弁護士で、ホワイトカラー犯罪弁護部門の責任者。 刑事、民事両面で多くの複雑なケースの弁護を担当し、勝訴に導いている。法律専門誌で賞賛され、「ワシントンで最も優れたホワイトカラー犯罪担当弁護士 トップ10」(リーガル・タイムズ)、「米国で最も影響力のある弁護士100人」(ナショナル・ロー・ジャーナル)などに選ばれた。コロンビア大学ロースクールで法学博士号(JD)を取得し、コロンビア・ロー・レビュー誌の編集長を務める。
――アサンジ氏が米司法当局に起訴される可能性はどのくらいあるか。
可能性はかなり高いと思う。理由はまず米国政府や議会のなかでアサンジ氏の訴追を求める声が非常に高まっていること、第2に彼を訴追することで外交文書暴露によって傷ついた外国との関係改善を少しは期待できること、第3に米国政府は、もしアサンジ氏を起訴しなければ悪い先例をつくってしまうと考えるからだ。
――スウェーデン政府はアサンジ氏の身柄引き渡しを求めているが、米国での起訴はスウェーデンの裁判が済んでからになるのか。
スウェーデン政府はアサンジ氏の性犯罪容疑の裁判を先に進めたいと考えているようだ。しかし、米国の司法当局はスウェーデンでの裁判を待たずにアサンジ氏を起訴できるし、裁判を同時に進めることはできる。
――米国で起訴される場合はどんな罪状になるのか。
まず考えられるのはスパイ罪(スパイ法違反)である。これは1917年に制定された法律で米国の安全保障を傷つけたり、政府の機密情報を漏洩した場合などに適用される。