エクソンモービルがガソリン等の販売攻勢を強め、石油業界関係者からは「独り勝ちではないか」と声が上がる。背景には、破格の値段で流通するガソリン等の石油製品「業者間転売品(業転玉)」の“復活”にある。
業転玉は、精製能力を持て余す国内製油所から商社等を通じて系列外の量販店などに廉価で放出される。1リットル当たり約10円安くなることもあり、価格破壊の原因となっている。とりわけエクソンは傘下の東燃ゼネラルを通して、市況に影響を及ぼしてきた。
とはいえ2010年上半期は需給が引き締まり、業転玉の価格が上昇、量販店などが悲鳴を上げていた。しかし、10年6月にJX日鉱日石エネルギーが“ブランド料”を1リットル当たり4円程度上乗せする価格改定に踏み切ったことなどから状況は一変した。
競争の激しい北関東(群馬・茨城・栃木)におけるガソリン平均価格の推移を示したのが右図だ。業転玉を仕入れて安値で売る有力ホームセンターの平均とスタンドを含む北関東平均の価格差は、10年1月の9.7円から、4月の5.6円にまで縮まった。だが、価格改定後の7月に13.3円に広がり、業転玉の攻勢が見て取れる。
スタンド事情に詳しい中澤省一郎公認会計士も「製油所の集中する大都市近郊などでノンブランド(業転)玉の価格競争力が息を吹き返した」と指摘する。業転玉復活は、系列スタンド業者を禁じ手の業転玉買いに走らせる。
石油情報センターの給油所経営・構造改善等実態調査(09年度)によると「最近1年間に系列外で仕入れた経験がある」と答えたスタンド事業者が52%に上る。うち74%が「安く仕入れたい」からだ。
実際、東燃ゼネラルの10年7~9月のガソリン販売量は、286.6万キロリットルと10年4~6月に比べて20%増やした。猛暑による特需もあるが、JXの12%増、出光興産の9%増、昭和シェル石油の9%増、コスモ石油の17%増を上回っている。業転玉の優勢はまだ続きそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)